2018年4月13日金曜日

エンジニアにとっての加齢という恐怖

シニアSEに仕事がこない本当の理由 | 日経 xTECH(クロステック):

 今回の話題は、中高年エンジニアと仕事について、人材コンサルタントの崎山みゆき氏による記事を元に考えてみたいと思います。実は、自分もいつの間にか40代中盤に差しかかろうとしており、中高年エンジニアは仕事が無くなると言われると、不安がよぎるところです。

 ソフトウェア開発の現場には若い人材を求める声が大きく、どちらかというとシニア世代は敬遠される傾向があると崎山氏は指摘されています。ある意味で年齢による差別「エイジズム」が強いと言えるかもしれません。これは、米国の老年医学者、ロバート・バトラー氏が1969年に提唱した概念で、歳をとっているからという理由で差別を受けることを指しています。確かに、内閣府が2014年に発表した「高齢期に向けた備えに関する調査」(↓)によると、いわゆる「老人」のマイナスイメージが先行しているように思えます。

 エイジズムには、偏見によるものと制度的なものの両面があります。偏見は高齢の人は仕事が遅いとか考え方が古いとか、人の個性をステレオタイプに分類してしまうことです。一方で、制度的エイジズムは、例えば定年退職や中途採用などに年齢制限を設けることで、実際のところ制度的なものも元を正せば、中高年は仕事を覚えるのが遅いという偏見に行き当たるかもしれません。制度的エイジズムは、1986年米国では年齢による雇用差別禁止法を、日本も2007年に雇用対策法を改訂して、採用にあたっての年齢制限を禁止しました。しかし、制度的エイジズムの根本が偏見であることを考えると、中高年の労働者が働きづらい現場もまだまだ多いのが実態だと思います。そして特に技術革新著しいソフトウェア開発の現場は、中高年プログラマーへの偏見が強い傾向があるようです。

 IT企業でよく言われるのが、プロジェクトマネージャが年下だとコミュニケーションを取りにくいということです。例えばプロジェクトマネージャが30代そこそこの場合、60歳近い中高年プログラマーは父親くらいの世代にあたり、なかなか「あなたは間違っています」とか「私の言うことに従ってください」とは言いづらいのです。そのため、シニア世代のプログラマーは敬遠されてしまうというエイジズムです。

 ただ今回の崎山氏の記事を読んでみて自分が感じたのは、自分の周りにはこの傾向は少ないなということでした。年上のメンバーに言いたいことが言えないということがなかったというか。そう言う意味で、自分の環境は非常に恵まれているのかもしれません。自分の環境がなぜエイジズムと縁が薄いかと考えてみると、2つの大きな要因があると思います。

 1つ目は会社間と発注・受注の関係です。自分のようなメーカー系開発者の場合、ソフトウェアに関してはプロジェクトマネージャやプロジェクトリーダーは社員ですが、実際のコーディングを担当するプログラマーは関連会社か外注さんのケースがほとんどです。大抵はリーダーやマネージャの属する会社とメンバーの属する会社とは、親会社と関連会社とか発注者と受注者という関係があり、年齢的なものでリーダーやマネージャがメンバーに過度に気を使うシチュエーションがありません。実際自分が今関わっているプロジェクトでも、マネージャは自分の上司、リーダーは自分ですが、メンバーは関連会社だったり外注さんですので、メンバーには親くらいのシニア世代の方もいますが、若いメンバーに指示するのと同じように指示することができます。

 そして2つ目は、技術的バックグラウンドの問題です。たまたま自分は入社直後にプログラミングを覚えたので、今でも並のプログラマー以上にはプログラムができること、そして標準化活動などアカデミックな場にも関わっているので、比較的若い頃から年上の人からも相談を受ける立場でした。つまり、技術的バックグラウンドがしっかりしていると周囲には思われていたわけです。そのため、ソフトウェア開発の現場では、年齢が上の人でも心理的に上位の立場からものを言うことができたのです。もちろん、年齢的に上の方に指示する時には、言葉遣いに気をつけたりリスペクトを持った上で、ビジネスとしての指示命令といった言い方をすることは忘れてはいけませんが、年齢が上だからといって言いたいことが言えないわけではないということです

 自分の場合、2つの幸運に恵まれていたので、これまで年齢面で気を使って言いたいことが言えないということはありませんでした。しかし、今後は自分自身がシニアエンジニアとなっていくのです。2つの幸運は、いざ自分がシニアになった時には、逆に働いてしまうかもしれないのです。特に2つ目の技術的バックグラウンドについては、下手に技術力があると逆に「老害」と扱われてしまう可能性につながります。

 そうならないためにはどうすれば良いか。明確な答えを持っているわけではありませんが、経験を重ねたエンジニアは若手と競うのではなく少し目線を高くしてアドバイスするような立場を築くことが重要かもしれません。若いうちはバリバリのプログラマーだった人も、全体を見渡してリスクを取り除くような仕事や経験を生かしたプロジェクトマネージャ・プロジェクトリーダーになっていくというキャリアは、自然なことかもしれません。自分の仕事の仕方も、若い頃のように次々と新しい技術を習得していくというより、最近は若い頃の「貯金」で仕事をしているケースも増えてきました。「円熟味」と言えるのかもしれませんが、40代中盤ではまだまだ最前線の技術を追いかけたい気持ちとのジレンマを感じる日々です。これが50代になっていけば、若い頃の「貯金」でする仕事の割合がどんどん増えていくことでしょう。

 若い頃の「貯金」がないと、年齢だけが高い「使えない」人材になりかねません。年齢が上がってきた時に「お払い箱」や「老害」にならないために、若いうちにしっかり「貯金」を作っておくことが重要かもしれませんね。

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