2017年11月22日水曜日

幸せを感じやすい脳をつくるトレーニング

How to Build a Happier Brain - The Atlantic:

 今回はThe Atlanticに掲載されているJulie Beck氏の記事を元に、「幸せを感じやすい脳」について考えてみます。元記事では、Rick Hanson博士による著書「Hardwiring Happiness: The New Brain Science of Contentment, Calm, and Confidence」が紹介されていて、この本の中でHanson博士が展開する「幸せを感じやすい脳をつくるトレーニング」が秀逸です。そう、「トレーニング」なのです。先天的なものではなく、後天的なトレーニングで幸せを感じやすい脳を作ることができるというのです。

 直感的にも、同じ経験から幸せを感じるか不幸を感じるかは人によって違う気がします。どのくらいの幸せを感じるか、どのくらいの不幸を感じるかも、人によって違うことでしょう。少し前に「どうせ」と考えるよりも「どうせなら」と前向きに関わることでポジティブな循環が生まれるという記事を書きましたが、まさに「どうせなら」大きな幸せを数多く感じる人生を送りたいものです。そして、それは「トレーニング」によって可能だとHanson博士は主張されているのです。

 不幸よりも幸せを感じたい、どうせなら大きな幸せを感じたい。実はその時、私たちの前に立ちはだかる大きな壁があります。それは、心理学的に「ネガティブバイアス(Negativity bias)」と呼ばれるもので、私たちは幸せよりも不幸を、成功よりも失敗のことを強烈に記憶に刻み込みます。人がこの特徴を身につけたのは、進化の過程における生存競争を生き抜くためだと言われています。大昔、人は捕食者の脅威や自然災害に晒されてきました。そういった生命を脅かす存在から身を守るため、人は良い情報よりも悪い情報を記憶に刻み込んで「臆病」になったのだと。しかし現代社会では、このネガティブバイアスは厄介な名残りですよね。科学技術の目覚ましい進歩によって、生活は相当豊かになっているにも関わらず、相変わらずストレスや不安、孤独感を抱えるようになってしまっているのですから。

 Hanson博士が唱える「幸せを感じやすい脳をつくるトレーニング」は、このネガティブバイアスを跳ね返すための「Taking in the good」なのです。日本語にすれば「幸せを噛みしめる」とでもなりましょうか、ある経験を幸せだと感じたとき、意識的に「自分は幸せだ」と言い聞かせるのです。日常生活の中で出会うさまざまな良いことやポジティブな体験をしっかりと意識することで、脳に染みこませるという方法です。時間は10秒〜30秒と短くても構いません。

 脳科学の世界では、何度も繰り返し行われた思考パターンはニューロン(神経細胞)の繋がりが強化され(ニューロンの繋がりの構造を「シナプス」と言います)、少ししか行なわれない思考パターンはつながりが薄れていくと言われています。何度も同じ思考パターンを繰り返すことで、既存のシナプスが刺激されたり新しいシナプスが作られたりするのです。しかし、人は自然にしていると、ネガティブバイアスによって不幸が反芻され、脳に染み込んで行ってしまいます。それに抗うためには、意図的に幸せを反芻して噛みしめることで幸せを感じるシナプスを強化し、ちょっとしたことでも幸せを感じやすい脳をつくることができる、というのが博士の主張なのです。

 「幸せを噛みしめる」ということは「ポジティブシンキング」とは異なります。ポジティブシンキングは、事象をどう捉えるかということであって、時にはネガティブな情報から目を背けることを意味します。そうではなく、人が生きていく上でポジティブなこともネガティブなことも起こりますが、ポジティブなことをしっかり噛みしめて(反芻して)しっかり脳に刻みつけましょうということです。そうすることで、幸せを感じる脳の回路が強化されるということなのです。

 Hanson博士は、日々の生活の中で特に「良さを噛みしめる」べき要素として、「安心感」「満足感」「絆」の3つを挙げられています。安心感を噛みしめることで、たとえ目前の仕事や生活が困難であってもまっすぐに向き合えるようになります。満足感を噛みしめると、喪失・妨害・失望というようなネガティブな事象が起きても、絶望のどん底に落ちることはありません。絆を噛みしめると、誰かに拒絶されたり否定されたとしても、自分を見失うことはありません。

 幸せを感じやすい脳というのは、言い方を変えると不幸に対する耐性が高くなるということかもしれません。ちょっとやそっとじゃ絶望しない強い心。それは幸せを感じやすい脳を作ることで手に入れることができ、幸せを感じやすい脳はトレーニングによって獲得することができるということなのです。「どうせなら」幸せを感じやすい脳を作って、不幸耐性を強化し、幸せな人生を送ることができればいいなと思いますよね。

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