2017年7月8日土曜日

「ネット中立性」が損なわれるとIoTの未来まで危うくなる

「ネット中立性」が損なわれると、IoTの未来まで危うくなる|WIRED.jp:

 今回は、そんなこと今まで考えもしなかったかも、という話題です。その話題とは、「ネットワーク中立性」。インターネットは、以前はパソコンから接続するのが当たり前でしたが、今ドキはスマホからの接続の方が多いくらいになり、さらに現在はIoT(Internet of Things)デバイスが続々と接続されつつあるところです。そんなインターネット接続スピードが誰かによって意図的に操作されたら...という話題です。

 これまで「ネット中立性」という規制がしっかりしていたため、自分たちは平等にインターネットにアクセスすることができました。「中立性」と言うか「平等性」と言ってもいいかもしれません。しかし、この「ネット中立性」ということをよく考えてみると、なぜこれまでこうもしっかりと守られてきたので不思議だと思いませんか。例えばAT&T、Comcast、Verizonのように、自前でテレビ番組やストリーミングサービスをもつインターネットサービスプロバイダー(ISP)があります。これらの企業が、自社のユーザーがNetflixのような競合他社のストリーミングサービスを利用する時の通信速度を、意図的に遅くしたとしたらどうでしょうか。いやむしろ、自社のサービスを利用するときは速くして他社のサービスを利用するときは遅くしようという動機こそ大きいと思いませんか。それにもかかわらず、これまでネット中立性が守られてきたのは、それが単なるスローガンだけではなく実効を伴ったルールがあったからだと言えるでしょう。

 アメリカでは、2005年アメリカ連邦通信委員会(FCC)が「ブロードバンド政策綱領(インターネット政策綱領)」を発表し、公共のインターネットのオープンで相互接続された性質を保持し促進するために、消費者に次の4つの権利が与えられるとしました。その4つとは、
(1)合法なインターネットコンテンツに自由にアクセスする権利
(2)法が許す範囲で、自由にアプリケーションを実行しサービスを利用する権利
(3)ネットワークを傷つけない合法な手段で自由に接続する権利
(4)ネットワークプロバイダ、アプリケーションプロバイダ、サービスプロバイダ、コンテンツプロバイダを選択する権利
という、まさにネット中立性の中核をなす概念で、その後もFCCはネット中立性を守るための数々の規制を導入してきました。

 一方で、日本の固定ブロードバンドの領域では、ISPの市場支配力は高くありません。これは圧倒的なネットワークを持つNTTへのピンポイントの規制が有効に働いていて、NTT東西は自身でISPサービスを提供できないだけでなく、独立系ISPも系列ISPと平等に扱わなければならないからです。しかし、モバイルブロードバンドの領域は様相が違っていて、ネットワークを持つ企業が自らISPを提供しているので、市場の寡占度が高くなっています。アメリカと同じように、規制によって解決していかなければならない状況だと思います。

 しかしここへきて、この「ネット中立性」こそ大切だとする従来とは、風向きが変わりつつあると報じるニュースを耳にするようになりました。今回の元記事でも「FCCがネット中立性に関する規制を行う機関の権限を覆えすプロセスを開始した」と報じています。注意深く調べてみると、確かにネット中立性の問題は古くから賛否両論で、反対派の意見もそれはそれでもっともなケースもあります。例えば、近年インターネット上を流れるデータ量は加速度的に増加しており、特に動画配信や音楽配信など多くの帯域幅を占めるサービスを提供する企業は多くの料金が徴収されるべきだという意見は、それはそれで説得力があります。よく考えてみると、日本の多くの携帯電話会社で月当たり通信量が5GBや10GBなどの上限を超えたユーザーに速度制限をかけるのは、厳密にはネット中立性に反する行為かもしれません。

 もしネット中立性がなくなってしまったら、インターネットは一体どうなってしまうのでしょうか。例えば、最近のIoTの中には、工場やオフィスの警報が作動したとき、スマホや携帯に通知するという機能がよく見られますが、警報データがインターネット上を移動する時間というのはこのサービスの品質そのものと言えます。つまり、IoTデバイスが送受信するデータ量は圧倒的に少量ですが、リアルタイム性が高いことにこそ価値があります。もしISPによってその品質価値を握られてしまうことになれば、ISPがIoTの発展に大きな蓋となってしまう可能性があります。つまり、例えばあるIoTサービスのインターネット接続スピードを上げて本当の効果を得るためには、ISPが特別な契約を要求してくるかもしれないということです。

 元記事でも少なくとも現時点においては、口先だけでもISPはネット中立性をうたっています。しかし、ユーザーとISPの立場は決して平等ではなく、ISPの競合が少ない状況では、ISPのネット中立性を守るんだという言葉は慰めにしかならないかもしれません。日本でも、モバイルブロードバンド分野はISPの寡占化が進んで危険な状況にあります。法的強制力のある保護が必要になってきているかもしれません。

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