2017年5月30日火曜日

勝間式「利益の方程式」(企業が利益を上げるためには)

勝間式「利益の方程式」 ─商売は粉もの屋に学べ!─ | 勝間 和代 |本 | 通販 | Amazon:

 今回は、テレビでもおなじみの勝間和代氏のビジネス本「利益の方程式」をご紹介したいと思います。この山ちゃんウェブログで本の紹介をするのは珍しいことなのですが、実は最近、会社の幹部との、利益を出すためのブレインストーミングに出席しなければならなくなり、一夜漬けの勉強をしたのです。とてもわかりやすい方程式が示されていたので、ここに残しておこうと思います。

 考察の対象は「利益を上げること」です。決して「売上を上げること」ではありません。えてしてこの両者は混同されがちなのですが、利益と売上は明らかに別のものであり、片方を上げれば片方が下がるということは常に起こり得ます。基本的に、会社は売上をいくら上げても、利益が赤字であれば倒産の憂き目を見ることになります。逆に売上が上がっていなくても、利益さえ出せているならその会社は潰れません。したがって、ビジネスにおいてまず上げるべきは、売上ではなく利益なのです。

 それでは「利益」とは何でしょうか。あまりにも当たり前な質問ですが、この質問に正確に答えられる人は意外に少ないんじゃないかと思います。少し前の自分も、何となく儲けのことだろうくらいで、あまり意識していなかったように思います。勝間氏の言われる「利益の方程式」は
  利益 =(顧客単価 - 顧客獲得コスト – 顧客原価)×顧客数
たったこれだけです。顧客単価とは1件の案件で顧客から貰えるお金、顧客獲得コストは営業経費のこと、顧客原価は自分たちメーカーの立場なら製造原価に相当します。つまり単純化されたこの式を見れば、利益を上げるには次の4つしかないことになります。

(1)顧客単価を上げる
 1件のお客さんにより多くのお金を払ってもらうためには、基本的には製品の魅力増しが必要です。自分たちのようなメーカーの立場だと、他社差別化できる技術など、これなら高くても仕方ないと思って貰える製品に磨き上げることがこれに相当します。
 変化球としては「松・竹・梅の価格設定」というのがあります。例えばレストランのランチコースを3,000円と1,500円の2つのラインナップの場合、多くのお客さんは1,500円のランチを選ぶかもしれません。そこで新たに5,000円のコースを追加して、5,000円・3,000円・1,500円という松・竹・梅にすると、3,000円のコースを選ぶお客さんが多くなるという寸法です。これも5,000円という、より魅力の高い製品を投入するという意味では、製品の魅力増しと似たようなものかもしれません。

(2)顧客獲得コストを下げる
 理想的な状態は、顧客獲得コストが限りなくゼロに近い状態です。そのための1つは、オプション方式だと思います。自分のような電機メーカーの場合、例えばテレビを買ってもらった顧客には、合わせてビデオもいかがですか、というやり方です。メーカーの場合は特に、同じメーカーで揃えてもらえれば、両方が自動的にリンクして便利な機能が使えますよというやり口もあり、そういうやり方をすると、追加で買ってもらった分はほとんど顧客獲得コストがかかっていないことになります。

(3)顧客原価を下げる
 顧客原価とは、その製品を作る(あるいはサービスを提供する)のにいくらかかったかというもので、メーカーにおける製造原価に相当します。原価を下げるということは一般的に品質を下げるということに繋がりやすいので、下げすぎると顧客離れを引き起こすことになります。顧客が魅力を感じているところの品質を下げず、顧客が魅力を感じない部分では手を抜く(ちょっと言い方悪いですが...)、品質にメリハリをつけることが重要になります。

(4)顧客数を増やす
 顧客数を増やす時には、無料かごく低価格でサービスを体験してもらって、近い将来お客さんになってもらおうという作戦がよく取られます。スーパーの試食がそうですし、アパレルの試着もそうかもしれません。自分たちのような電機メーカーの場合、これまで試食や試着に相当することが行われていませんでしたが、最近は「PoC(Proof of Concept)」という名のもとに、安い金額でシステムや製品をお試ししてもらうという動きが出てきています。

 (1)〜(4)は、利益の方程式から結論づけられる、ものすごく当たり前の論理です。自分の場合は、このそれぞれに対応した施策を考えていくということで、何とかブレインストーミングを乗り切ることができました。

 利益を上げるというと、すぐにそれは売上を上げることと同じだと勘違いしてしまう人がいますが、そうではないのです。実際のところ、昔ダイエーは6兆円もの売上がありましたが倒産してしまいました。JALが2010年に破綻に追い込まれたのに2012年に再上場を果たしたのは、決して売上が上がったからではありません。JALがやったことといえば、
  a. 不採算路線の廃止
  b. 保有機種を7機種から4機種に絞る
  c. 従業員の削減
と、いずれも売上を増やす施策ではありません。どちらかというと、「リストラ」によって方程式の中でマイナスになるお金を減らす施策だったのです。入るお金を増やすのが難しいなら、出るお金を減らす。ものすごく当たり前です。一番の失敗パターンは、両方を同時にやろうとすることです。入るお金も増やして出るお金も減らす、それは一見パーフェクトな施策ですが、簡単にそれができるならそもそも危機に陥っていないわけで、大抵は入るお金を100円増やして出るお金も200円増えてしまうという結果に陥りがちなのです。方程式のどれに注力するのか、経営者が強く方向づけすることが大切なんだと思います。

「AlphaGo」という“神”の引退と、人類最強の19歳が見せた涙の意味

「AlphaGo」という“神”の引退と、人類最強の19歳が見せた涙の意味:現地レポート|WIRED.jp

 2016年3月、Google傘下のDeepMind社が開発した「AlphaGo」が韓国のプロ囲碁棋士・李世乭(イ・セドル)氏に4勝1敗と勝利をおさめて1年あまり、今度は世界最強の囲碁棋士・柯潔(カ・ケツ)氏に対して3連勝と完全勝利をおさめました。これでAlphaGoは囲碁の世界を引退し、次なるステージへと進むようです。

 完敗が決まった最終戦、わずか19歳の天才・柯潔(カ・ケツ)氏はこれまでにない苦悶の表情を浮かべました。一部報道においては、涙さえ流していたとも言われています。2連敗と後がなくなった柯潔(カ・ケツ)氏は、好物のぶどうやリンゴ、チョコレート、クッキーなどを並べて対局に臨みましたが、後がないためか、むしろこれまでの2局よりも緊張の表情が見られました。2時間が過ぎる頃には、眼鏡を取って手で顔を覆い、苦痛とも言える表情を浮かべて一手を打ち、そのまま席を立ちました。10分ほどして席に戻った柯氏は、涙を拭って次の一手を打ちましたが、その後約1時間の後、柯氏は投了を宣言しました。

 AlphaGoと李世乭氏の対局に対して、柯潔氏は自分ならAlphaGoに勝てると豪語していましたが、結果的には1つも勝つことはできませんでした。しかし、これは柯潔氏のビッグマウスが責められるべきではありません。AlphaGoはもはや、李世乭氏に1敗した当時のAlphaGoではなかったのですから。李世乭氏との対局後も「強化学習」と呼ばれる学習を経て、Masterという仮名でトッププロを含む相手に60連勝と無敵を誇るまでに急成長を遂げていたのです。従来は人間のトッププロの棋譜を先生として学習を行なっていましたが、AlphaGoはついに先生を追い抜いてしまい、AlphaGo同士での対決を繰り返して高め合うという究極の領域に足を踏み入れたのです。その間の成長ぶりたるや、李世乭氏が一矢報いることができた昨年3月のレベルをはるかに凌駕し、柯潔氏をして「囲碁の神」と言わしめるほどになっていたのです。

 2015年に「ブロック崩し」をプレイするAIで世間を驚かせ、2016年・17年にはAlphaGoで第三次AIブームを大きなムーヴメントにまでした立役者・AlphaGoは、わずか3年ほどで4,000年の囲碁の歴史に大きなインパクトを残し、次のステージに進むことになります。AlphaGoの開発元・DeepMind社の理念が「人間の知性を解明する」という究極の目標であることを考えれば、囲碁はあくまでもその過程にすぎないということです。記者会見でDeepMind社のデミス・ハサビス氏は、今回のような分野特定型の神ではなく、今後は汎用性を持ったAIの開発に取り組むと語っているそうです。

 しかし、ちょっと待ってください。さらっと「汎用AI」と言ってしまっていますが、汎用AIという言い方は以前この山ちゃんウェブログでも注意した「人工汎用知能(Artificial General Intelligence)」と呼ばれる分野を想起させます。現在脚光を浴びている全てのAIは分野特化型の「弱いAI」ですが、人工汎用知能はまるで人間のようにそこに精神が宿る「強いAI」そのものです。今のところ精神が宿る「強いAI」は実現のめどが立っていないというのが定説ですが、ハサビス氏のような超天才プログラマーには、そこへの道筋が見えているのでしょうか。

2017年5月29日月曜日

時代が生み出した新しい「親の責任」。ネットに繋がった子どものおもちゃをハッカーから守るには?

時代が生み出した新しい「親の責任」。ネットに繋がった子どものおもちゃをハッカーから守るには? | FUZE:

 あらゆるものがインターネットに繋がるIoT(Internet of Things)、おもちゃもその例外ではありませんが、プライバシーやセキュリティ面を考えると、子どもが使うものだけに心配なところです。今回はそんな話題を、ライターの塚本紺氏の記事を元に考えてみたいと思います。

 2015年に発売された、会話ができるバービー人形「Hello Barbie」は、子どもの声や話し方をクラウド上に保存する機能があります。自分の子どもの声のデータが取られ、会話の中から子どもの好みも把握して行くと聞くと、それだけで薄気味悪い気がします。さらに暗号システムが古かったために、子どもたちの会話をハッキングして盗聴することもできると指摘されました。

 他にも、子どもと会話をするおもちゃ「My Friend Cayla」が、こっそり子どもの音声データを外部のサーバに送信していたことがわかりました。CNNが報じたところによれば、その送信先はNuance Communicationsという企業で、この会社は軍や警察・諜報機関などを顧客とする音声テクノロジー会社だそうです。「My Friend Cayla」は、アマゾンのEchoやアップルのSiriのように常時音声を聞き取っているので、子どもの声だけでなく大人の声も拾っている可能性も十分にあります。おもちゃを通じて収集された音声が諜報目的で使われていた可能性すら否定できず、それだけで寒気がしてきますよね。プライバシー侵害だけでなく、第三者によるハッキングも簡単で、盗聴器として利用されるという指摘もされました。ノルウェー消費者委員会が制作した動画(↓)は、「My Friend Cayla」がいかに危険かを説明しています。 

 CBSが報じたところによれば、「My Friend Cayla」には、ディズニー関連の広告を発言をするようプログラミングされていたそうです。人形が、自分が好きな歌は映画「アナと雪の女王」の「Let It Go」だとか、「フロリダのディズニーランドに行きたい」なんて発言をして、親が知らないところで子どもに対する広告が行われていたのだとか。言葉も覚束ない子どもが、人形の発言が純粋に遊びのコンテンツなのか広告なのかを判断することなど到底できませんので、このようなIoTを売りにしたなおもちゃを子どもに与えるのは、よほど考えものかもしれません。

 IoTが当たり前になりつつある現代、子どものプライバシーとセキュリティは親が責任を持って守るしかなさそうです。これは従来にはなかった「親の責任」で、この手のテクノロジーに詳しくない人にとって相当な難題ではないかと思います。米消費者団体Comsumer Reportがオンライン上での子どものプライバシーをるためのガイドラインを発表していますので、自信のない方はこちらを一読しておくといいと思います。

 リスクを見極めるポイントは「データがどこに保存されているのか」です。おもちゃ本体やBluetoothなどで接続されたスマホに保存されるのであれば、比較的リスクは小さいと判断してもよいでしょう。しかし、インターネット経由でクラウドサーバーへ送られる場合、途中でそのデータが盗まれるリスクも上がりますし、一度クラウド上へ送られたデータはどのように二次利用されているか分かりづらくなります。個人的には、インターネットに繋がるおもちゃを子どもに与えるのは、やめておいたほうがいいと思います。

2017年5月28日日曜日

始まりは道端で漏らした“うんこ”――「排泄ビッグデータ」が介護現場に変革をもたらす | 常識を越えろ! 変革者たちの挑戦

始まりは道端で漏らした“うんこ”――「排泄ビッグデータ」が介護現場に変革をもたらす(前編) | 常識を越えろ! 変革者たちの挑戦 | nikkei BPnet 〈日経BPネット〉:日経BPオールジャンルまとめ読みサイト:

 今回は山田久美氏の刺激的なタイトルの記事を元に、変革者の挑戦についてご紹介したいと思います。その変革者とは、トリプル・ダブリュー・ジャパンの中西敦士代表取締役です。トリプル・ダブリュー・ジャパンは、2015年2月創設のベンチャー企業で、同社が開発した「DFree」というウェアラブル装置(↓)が注目を浴びています。「DFree」は、下腹部に装着することで膀胱や直腸の状態をセンシングして、排泄のタイミングをスマートフォンなどに知らせてくれるのです。簡単に言えば、いつウンコやオシッコが出るかを予測して教えてくれるもので、DFreeの「D」はおむつを意味するDiaperの頭文字です。

 DFreeの使いどころとして、最もターゲットになるのは「介護現場」です。介護現場では、たとえ自力でトイレに行ける人でも、転倒リスクがあるために必ず介護職員が付き添います。また入所者がコミュニケーション可能でも、お年寄りの場合は尿意や便意の感じ方が鈍くなる傾向があり、入所者ご本人がまだ大丈夫と言われても実際には排泄タイミングが迫っている場合もあります。したがって多くの介護施設では、時間を決めて定期的にトイレに連れていくということをしますが、実際のところ「空振り」に終わることも多く、出るか出ないかわからないのにトイレに連れて行くというのは職員の大きな負担にもなっています。人手不足の介護施設では、負担を減らすためオムツを使用することになり、それが入所者の寝たきりを助長したり、認知症の悪化やQOL(=Quality of life:生活の質)低下につながります。入所者をオムツから解放してあげられれば、入所者ご本人の尊厳を守るという上で大きいのはもとより、介護現場で働く職員にとっても大きな負担軽減につながります。

 原理的には、DFreeは尿意や便意を検出しているのではなく、膀胱や直腸にどれだけ尿や便が溜まっているかという「客観的な事実」ととらえています。認知症や脊髄損傷の方の場合など、尿意や便意を感じることができない人も多くいて、そういう方々に使ってもらうための製品だからです。そして、介護職員のスマートフォンに入所者の膀胱にどれだけ尿が溜まっているか、直腸にどれだけ便が溜まっているかをグラフ表示するのです(↓)。この客観的な観測結果を元にして入所者をトイレに連れて行けば、オムツがなくてもベッドを汚すことがなく、職員の負担もグッと減るのです。


 記事の後編では、中西氏がこの製品を思いついた意外なきっかけが述べられています。実はDFreeは介護現場をターゲットに開発されたものではなく、むしろ開発の中で知った大きな潜在市場だったというのです。ではもともとの開発のきっかけとは何だったのかというと、それはこの記事にもなっている意外なアクシデントだったのです。中西氏の言によれば「すべての始まりは2013年9月のある日、自分が留学先の米国カリフォルニア州バークレーの道端でうんこを漏らしたことにあります」とのこと。「また漏らしてしまうのではないか」という不安で、しばらくは外出できないほどだった中西氏。「二度と漏らさないためにはどうすればよいか」を考え抜いた結果「排泄のタイミングを予知できるようにする」という結論にたどり着いたのです。何かとタブー視されがちな「排泄」に着目して起業した中西氏。現在はニッチな市場かもしれませんが、これからますます高齢化社会担って行くことを考えると、未来は相当明るいんじゃないでしょうか。

 最後に少し技術的な部分も。トリプル・ダブリュー・ジャパンは、IoTやビッグデータ・AIといった最近の流れにも乗ろうとしています。DFreeによって収集されたここのユーザーのデータを「排泄ビッグデータ」として収集し、ユーザーの膀胱や直腸の容量と排泄までの時間などを、人工知能(AI)などで学習させます。それによって、より精度の高い予測を可能にしていこうというのです。センシングによって収集されたビッグデータを、AIで解析して排泄予測にフィードバックするという、IoTのループともいうべき黄金律を狙っているのです。なにせ、これまでは排泄データを集めようとした人なんていなかったわけですから、いざ集まったデータには相当の価値があるんじゃないかと思います。例えば介護だけでなく医療分野の研究にも活かせそうですし、AIによる解析で思わぬものとの関連が見出されるかもしれません。現在すでにそうなりつつありますが、次の時代はデータを持っていることは企業の大きな強みになる、そんな時代なのですから。

2017年5月27日土曜日

パスワードは定期的に変更してはいけない

「パスワードは定期的に変更してはいけない」--米政府 (ニューズウィーク日本版) - Yahoo!ニュース:

 今回はニューズウィーク日本版の記事を元に、パスワードの定期変更について考えてみようと思います。実は以前にもこの山ちゃんウェブログで「パスワードの定期変更に意味はあるのか」という記事を書きましたが、その時は定期変更すべきかどうかとう結論までは至っていなかったので、自分にとってもリベンジという感じです。

 元記事で言われているのは、これまでアメリカの国立標準技術研究所(NIST)が発行する「電子認証に関するガイドライン」では定期的にパスワードを変更することが書かれていたのですが、新版からはこのルールを変更して、パスワードを定期的に変更することをユーザーに求めるのはやめるということです。

 実は自分の会社でも、会社支給のパソコンのログインも社内システムへのアクセスもユーザーIDとパスワードの認証を求められ、パスワードは半年に1回は変更を求められます。それも使用する社内システムごとに異なるID・パスワードですから、結構ひんぱんに画面に「パスワードが長期間変更されていません」なんて出て、その都度新しいパスワードを設定するのです。

 実際ほとんどのユーザーが気づいていることですが、定期的に変更しなければならないパスワードがいくつもあった場合、それまでのパスワードの末尾の番号を順番に増やしていくとか末尾のアルファベットをa, b, c, ...と順番に変えるだけとか、全く新たなパスワードを作るのではなく、ユーザーはそれまでのパスワード容易に想像がつくパスワードに変更するだけなのです。だってそうでしょう、最近はアルファベットだけとか数字だけのパスワードはダメとか、意味のある単語はダメとか、8文字以上でなきゃダメなんていう制限もあるので、システムごとに定期的に新しいランダムな文字列を作り出してそれを覚えておけというのは、人間の能には相当に酷なことです。しかも、たとえユーザーが神業に見える定期パスワード変更(新たなランダム文字列を都度作り出してそれをシステムごとに暗記しておく)ができたとしても、実際のところハッカーにとってはパスワードのクラック難易度はそれほど変わらないのです。パスワードの定期変更は、ハッカーに対するよりもむしろユーザーに対して不便を強いることになるのです。

 よくキャッシュカードの暗証番号に誕生日を使うなと言いますが、コンピューターシステムのパスワードとキャッシュカードの暗証番号は、一見似ているものの実は全然レベルの違うものです。キャッシュカードの場合、カードそのもの認証の一部を担います。たとえ暗証番号がバレても、基本的にはそのカードを持っていなければ役に立たないので、カードという物理要素と暗証番号というサイバー要素の組み合わせで認証をしていると言えます。一方でコンピューターシステムのユーザーID・パスワードの組み合わせは、サイバー要素のみで認証するわけですから、サイバー要素がバレることがそのままクラッキング被害につながるという点で脆弱です。パスワードとその定期更新という観点ではさらに悪いことに、サイバー要素のみのクラッキングにはほぼ100%コンピューターが使用されることです。コンピューターにとって、現時点での任意の8文字を見つけ出すことは、それが定期的に変更された結果なのかどうかは全く関係ありません。定期的な変更が有効なのはコンピューターがその8文字を見つけ出すより先にユーザーがパスワードを変更してしまうことですが、イマドキのコンピューターは高速なので、実際には1日1回とか1時間に1回とかの頻度で変更でもしない限りは効果が期待できないでしょう。

 じゃあ一体どうすればいいのでしょう。1つはICカードのような物理要素、あるいは指紋や静脈などの生体要素を組み合わせることです。複数の要素を組み合わせるというのは、セキュリティ上もかなり有効です。ネット上のサービスなどで、物理要素や生体要素と組み合わせるのが難しい場合、「パス『ワード』」の代わりに「パス『フレーズ』」を使うという手があります。パスワードがせいぜい8文字とか16文字程度のランダムな文字列なのに対して、パスフレーズは64文字以上の文章(フレーズ)です。実際、NISTでもパスフレーズを推奨していて、フレーズであれば長くても覚えられますし、文字列が長いことでクラッキングも困難になります。意外に知られていませんが、WindowsではすでにWindows2000以降のOSではパスワードとして127文字まで使用でき、句読点と特殊文字だけでなく日本語も可能です。

 前回は出なかった結論について、今回は「パスワードの定期変更はしない」ことが正解、そして「8文字や16文字程度のパスワードよりも、長いパスフレーズを使う方がよい」と結論づけておこうと思います。

2017年5月26日金曜日

さすがは東大生!?東大の学園祭であの「逃げ恥」をパロったお店の名前が秀逸すぎて大人気に

さすがは東大生!?東大の学園祭であの「逃げ恥」をパロったお店の名前が秀逸すぎて大人気に|@Heaaart - アットハート:

 今回は軽い話題ですが、東大で5月20・21日に本郷・弥生キャンパスで行われた学園祭「五月祭」で、なかなか秀逸なお店があったというので、ご紹介したいと思います。昨年流行った「逃げるは恥だが役に立つ」のパロディということで、そのお店がこちら(↓)。


 世間的に忘れた頃にやってくるパロディですが、本家「逃げ恥」の原作者・海野なつみ氏もご自身のTwitterで
  クオリティ!!!
とツイートするなどこの牛串屋さんは大人気で、商品の方も無事完売したそうです。

2017年5月25日木曜日

「イカの締め方」動画に虐待指摘 「命を頂いて生きる」と省みる声

「イカの締め方」動画に虐待指摘 「命を頂いて生きる」と省みる声   – しらべぇ | 気になるアレを大調査ニュース!:

 今回はしらべぇ編集部・もやこ氏の記事を元に、最近多いナナメ上の批判について考えてみたいと思います。元記事で紹介されているのは、釣ったイカを締める様子を撮影した動画をTwitterに投稿した学生に、想定外の反応が多かったという記事です。

 イカの締め方を投稿したのは、「水族館の飼育員」を目指して勉強に励む男子学生だそうです。釣りをする人達の参考になればと、手際よく締める様子を撮影してTwitterに投稿したのです。

 ところが、他のユーザーからは予想だにしない反応が返ってきます。実際の反応の一部がこちら(↓)。

・かわいそう…
・なんか、イカの拷問みたいだ
・イカの気持ちになってください
・あなたは人間もしめるつもりですか?動物も人間と同じ命。なんで人間のために苦しめなければいけないのかよく考えてツイートしてください
・うん、わーすごい技術!犬殺して動画あげてるのと変わらない気がするんですけど

 もしかしたらあなたは、ネット上でのこのナナメ上の批判を、取り上げるに値しないと思うかもしれません。この批判をしている人は肉や魚を食べないのだろうか、百歩譲ってベジタリアンだったとしても植物にも生命があるので、それを奪っていることには変わりないのだが、とか。人間は他の生命を殺してこれを食べることでしか生きられない、そういう意味で動物・植物の生命を奪う「食事」という行為は極めて罪深い行為です。他の「生命を頂いて生きる」のが人間なのだから、頂いた生命の分も一生懸命に生きなければならないのはもとよりでしょう。そういう意味で、スポーツフィッシングのような魚の生命を弄ぶスポーツに眉をひそめる人がいるのも頷けます。

 ところで、仏教の世界には「不殺生戒(ふせっしょうかい)」という戒めがあります。要するに「生命(いのち)ある生きものを殺すな」ということで、これを文字通りに受け取るなら、イカの締め方を投稿した学生さんは、少なくとも宗教的には批判されても致し方ないかもしれません。ところが実際はどんな高僧でも食事は摂るわけで、お米・野菜・肉・魚など、人間が生きるために食べるものはすべて生命あるものです。したがって、食事とは他の生命を自分の生命に変える行為と言えるでしょう。イカの締め方の投稿に批判を浴びせるユーザーは、無意識に根付いている「不殺生戒」を根拠にした反応を示しているのかもしれませんが、彼ら自身も不殺生戒を破っていることは明白で、むしろ人間は不殺生戒を破らざるを得ないことを懺悔すべきです。食事の挨拶「いただきます」には「あなた方の尊い生命をいただいて、精いっぱい活かせていただきます」という意味に解釈するべきでしょう。

 そして面白いことに、キリスト教では殺生に対して「罪」とは考えないと言われています。それは旧約聖書の創世記に次のように書かれていることからもわかります。

神は彼らを祝福して言った。
『産めよ、増えよ、地に満ちて地を従わせよ。
 海の魚、空の鳥、地の上を這う生き物をすべて支配せよ。』

キリスト教では、動物は人間に食べられるために神が用意したもの、という考え方をします。この世の万物の創造主がそう決めたのですから、動物を殺してその肉を人間が食べることはなんら問題がありません。一方で動物が人間に刃向かうことは、神に対する冒涜となるのです。ヨーロッパでは、たまに教会のお隣が屠殺場という場合がありますが、キリスト教の場合は何も問題がないわけです。そして、キリスト教の人であれば、今回のイカを締める動画は何も問題なかったのでしょうね。

 そう言えば、今回の元記事で言われているイカを締める動画に「かわいそう」との批判が出たという話で、以前四足歩行のロボットを蹴飛ばす動画も「かわいそう」との批判が出たという記事を書いたことを思い出しました。その時は、見た目が人間に近かったり、普段可愛がっているペットに近いというだけで、人間がロボットに感情移入してしまうのが面白いと思いましたが、今回のイカはちょっと見た目で感情移入というのではなさそうですね。それとも、最近は若い女の子がグロテスクなものも「かわいー」と言ったりしているので、人間の美醜判断の基準が変わってきたのかもしれませんが。

2017年5月24日水曜日

鍵はカルシウム断ち。卵子に入れない精子にする「分子コンドーム」

鍵はカルシウム断ち。卵子に入れない精子にする「分子コンドーム」|ギズモード・ジャパン:

 今回の話題は「避妊」。分子細胞生物学のPolina Lishko助教授が率いるチームが、従来とは違う全く新しい避妊方法を見つけたという面白い記事を見つけたので、ご紹介したいと思います。

 そもそも避妊とは、受精もしくは受精卵の着床を妨げて妊娠を避けることの総称です。いくつもの方法があり、一番有名どころとしてはコンドームという避妊具を使う方法でしょう。他にも避妊用ピルのような薬品を使用する方法、確実性に疑問はあるもののオギノ式や基礎体温法、不妊手術のような外科手術によるものもあります。今回の避妊方法はは、Polina Lishko助教授が「分子コンドーム」と名付けていますが決して物理的な避妊具によるものではなく、薬品によって精子が卵子に入ることを妨げる方法なので、ピルなどと似た方法です。しかし、ピルのような副作用がないことこそ、この方法の優れているところです。

 元記事では、妊娠のメカニズムとその中で「分子コンドーム」がどう作用するかを詳しく説明されています。精子は自らの身長の24,000倍もの距離(これは175cmの身長の人間に置き換えれば42km、マラソン相当ということですね)を泳いで、卵子に到達するとドリルのように回転して侵入します。このドリルのような回転を駆動するのが、実はカルシウムなのです。「分子コンドーム」は、じゃあ燃料のカルシウムを発ってしまえれば卵子にタッチダウンできないんじゃないかという発想なのです。そして、カリフォルニア大学バークレー校・Polina Lishko助教授は古今東西の男性避妊の薬効の聞こえ高い生薬を調べ回り、ついにそのカルシウム噴射の元を断つ成分に辿り着いたのです。しかも2つ。


 1つ目は「ライコウトウ(別名トリプテリジウム・ウィルフォルディ)」から抽出される「プリスチメリン(pristimerin)」という成分。関節リウマチに効くとされており、漢方の世界ではすでに精子に作用して生殖機能を低下させると言われていました。もう1つは、マンゴー、アロエ、たんぽぽの根やぶどうに含まれる「ルペオール(lupeol)」。抗がん薬として臨床実験が行なわれたりしています。

 コンドームは今やコンビニでも気軽に買える避妊具ですが、ちょうどのサイズを使用しないと、行為中に外れてしまって避妊に失敗するケースもあると言います。ピルは、医療機関を受診して入手しなければならないのでハードルが高いばかりか、女性の大敵である体重増加や偏頭痛・吐き気・イライラなど副作用が言われています。そんな一長一短の避妊において、今回の「分子コンドーム」はまだ入手のしやすさがどの程度になるか分かりませんが、少なくとも副作用がないことと原理的にかなり避妊の確実性が高いだろうところが期待を持てる技術ですね。

2017年5月23日火曜日

「お金があれば公立中は避けるべき」は真実か? | 公立校で伸びる子は親が違う

「お金があれば公立中は避けるべき」は真実か? | 公立校で伸びる子は親が違う | 日経DUAL:

 今回の話題は、ズバリ公立中学校と私立中学校。元にしている記事は、教育環境設定コンサルタントという肩書を持つ松永暢史氏の連載記事2回目です。いわゆる受験のプロが語る中学受験の話は、小学生の子供を持つ自分も連載1回目から目が離せません。

 実は以前にも同じようなテーマで書いたことがあり、遠い昔のことではありますが自分も中学受験をして私立通学に通った経験を思い出し、私立に通うには子供自身に「折れない心」が必要だと考えました。正直なところ、自分も親になってみて、私立中学の魅力は捨てがたいものがあります。中学3年間ではなく中高6年間で計画された学習、設備の整った校舎、レベルの高い教師陣、そして何よりもレベルの高い(意識の高い)友人が周りにいること。中高一貫の私立校に通った身からすると、これらのお題目が全て当てはまるかどうかは微妙な気もしますが、実体験として公立中学校との比較はできていないので、概ねそうだったと言えると思います。

 それに対して、公立中学校はどうでしょうか。まず私立との大きな違いは「多様性」でしょう。将来東大を目指すような子も、掛け算九九もままならない子も同じ教室に詰め込まれるわけですから、社会の格差がそのままクラスに持ち込まれるでしょう。授業がターゲットとする子供のレベルは中の下といったところでしょうから、レベルの高い子は安心してしまって勉強する気が失われ、レベルの低い子は置いてけぼりを食ってしまうことになりがちです。したがって、多様性のある子供たちをクラスとしてまとめ上げる教師には、相当な力量が求められます。イマドキ体罰はできませんから、多種多様なレベルの子供たちに同じ方向を向かせるための武器は「内申書」しか残されていません。つまり、公立中学校の教師は、言うことを聞かない子には「内申点が下がるよ」と言って言うことを聞かせるなど、この唯一にして最大の武器を上手に駆使して、多様な子供たちをまとめ上げるという仕事をしているというわけです。

 こう聞くと、テストの点数よりも内申点が重視される公立中学は不公平だと思うかもしれませんが、この「内申点」の仕組みがうまくハマる子にとっては快適な環境です。そもそも公教育というのは、国家公務員など国や地方自治体、日本のために役立つ企業を支える人材を育てるのが最大の目的です。そして、公務員や企業を支える人材とは、突飛な発想をしたり授業をろくに聞きもしないのにテスト本番だけ満点取るような天才肌ではなく、宿題をきちんとしてルールや提出期限を守る真面目な人、つまりは「内申点」が取れる人というわけです。したがって、真面目で慎重で人当たりもよく、将来的に公務員や教員、企業で働きたい子にとっては、公立中学校は非常に向いているのです。

 もう一つ、タイプ的に公立中学がハマるのは、将来ベンチャー企業を立ち上げるような起業家タイプの子です。なんせ公立中学は社会格差の縮図です。お金持ちのボンボンがいるかと思えば、明日の食べ物に困る子もいるでしょう。大人になってしまうと自分の属するクラスと違うクラスの人と触れ合うチャンスなどそうそうありませんが、公立中学ではそれが可能なのです。そういう多様な友達と触れ合うことで、様々なニッチな商品やサービスのタネを思いつくこともあり、同質性の中で育つ私立中学よりもいい意味で「鍛えられる」のも公立中学のメリットです。

 つまり、子供にいわゆるエリート階層を目指させるなら、私立中学に通うのがいいでしょう。公立中学は公務員や優秀な労働者といった社会を支える階層になることが多いですが、一方で将来ベンチャー企業を立ち上げて大儲けする子のも公立中学で育ちやすいというのだから、面白いですね。

2017年5月22日月曜日

たった7文字でスムーズに交渉の主導権が握れる、魔法の言葉

たった7文字でスムーズに交渉の主導権が握れる、魔法の言葉 - まぐまぐニュース!:

 今回は弁護士の谷原誠氏の記事を元に、交渉において主導権を取る方法について考えてみようと思います。谷原氏の記事は以前にも取り上げさせて頂いたことがあり、その時は口下手でも交渉で有利に立つ方法に関するものでした。

 さて、そもそも交渉における有利とはどんな状況なのでしょうか。お互いが自分の狙うべき落とし所をもって交渉のテーブルに着く以上、交渉の結論には双方が勝ち・双方が負け・片方が勝ちもう一方が負けという3通りの結果が得られる点が、交渉ごとが普通の勝負ごとと異なる点です。そんな中でも結果に直接的に影響するのが、どの議題をどの順番で話し合うかということです。例えば自分も、顧客に対して提案活動する時、他のメーカーとインタフェース等の交渉をする時、有利に立つためにアジェンダを準備することがあります。自分のような業種の世界だけかもしれませんが、アジェンダと議事録は通常は打合わせをセッティングした方、大抵は立場が弱い方が作成する暗黙のルールがあり、個人的には弱い側が有利になる習慣だと思います。さて話を元に戻して、交渉における有利とはその会議をコントロールすること、議論の順番を仕切ることこそが、結論の勝利にグンと近づく近道なのです。

 ところが、どちらがアジェンダや議事録を作成するか暗黙的なものがない場合や、そもそもアジェンダを準備するのが馴染まない交渉の場もあるでしょう。両方がアジェンダを準備した場合もあるでしょう。そんな場合、どちらが司会役を兼ねて会議をコントロールするのか、どちらのアジェンダを採用するのかという鍔迫り合い(つばぜりあい)が発生することになります。交渉に慣れている人は、議題の順番が自分の求める結論に沿っているかどうかよりも、会議をコントロールするということそのものが交渉を有利に進めるキーポイントだということを知っています。つまり、相手が出してきたアジェンダが自分が元々考えていたアジェンダと同じだから、相手のアジェンダに沿って議論してもイーブンじゃないか、という意見は残念ながら正しくありません。たとえ誰が考えてもこの順番でしょうというアジェンダでも、実際に自分の提案によってその順番が確定し自分が会議をコントロールしたという事実が重要なのです。

 谷原氏は、そういった主導権争いにスムーズに勝つための魔法の言葉を教えてくれています。その魔法の言葉とは、
 ...
「本題に入る前に」
 ...
コレです。一体「本題」とは何なのでしょうか。売買交渉の場合の本題は価格なのか、納期なのか、品質なのか、保証内容なのか、注文数なのか。自分が考える本題と相手が考える本題は異なるかもしれませんし同じかもしれません。しかし、そんなことはどうでもいいのです。とにかく「本題に入る前に」なのです。そして、この言葉とは裏腹に、自分にとっての「本題」を話すのです。例えば、自分にとって納期をどう決めるかがその交渉における重要ポイントである場合、「本題に入る前に、まず納期について合意しておきたいのですが。」といった言い方をするのです。この魔法の言葉は「このテーマはさほど重要なことではない」という前置きです。相手側は「いや、それが一番重要なことですので」と否定しにくく、こちらが望む議論の場をスムーズに設定することができるというわけです。なんとも日本語のマジックのような感じですね。

 そんなひねくれた言い方じゃなく、もっとストレートな言い方の方がいい場合もあります。それは、
 ...
 「単刀直入に」
 ...
という言葉です。ただ、「本題に入る前に」のようにしょっぱなは大した話じゃないですよというニュアンスではなく、助走もなくいきなり本番ですよというニュアンスなので、相手を身構えさせることに繋がりやすいので注意が必要です。もし相手が「単刀直入に」と言ってきたら「まあ、その話はあとにしましょう」とやんわりと断るのがいいでしょう。

 日本語って面白いですよね。交渉ごとは最初に自分のもっとも譲れないポイントを合意するのがセオリーですが、そのために「単刀直入に」と言うよりも、あえて「本題に入る前に」とこれは重要ポイントじゃないですよというニュアンスを伝える方がいいとは。仕事は交渉の連続ですし、日常生活もやはり交渉の連続だと言えるかもしれません。色々な交渉テクニックを知っていると、たとえ直接的に使わなくても、仕事や日常生活が少し捗るかもしれませんね。

2017年5月21日日曜日

Microsoft「Build 2017」のキーノートを見て思う、会社に見張られる恐怖

Microsoft「Build 2017」のキーノートを見て思う、会社に見張られる恐怖|ギズモード・ジャパン:

 少し前にロボット・コンピューター・AIといった科学技術は「現代版・禁断の果実」だという記事を書きましたが、その中のたとえ話で、呪文を唱えると泥人形がゴーレムとなってユダヤ人を守ってくれますが使い方を間違えると狂暴化するように、人類は自分たちの労働を肩代わりしてくれ便利なロボットやコンピューター・AIを創り出したのに、逆にそれが私たちに牙をむくことがあります。今回の元記事は、Alex Cranz氏によるMicrosoftの開発者向け会議「Build 2017」のレポートですが、その中で科学技術の行き過ぎが逆に人間にマイナスになりやしないかという話を取り上げたいと思います。

 気になったのは、工事現場をモニタリングするカメラのテクノロジー(↓)。カメラはクラウドに接続されていて、映像からその人を特定してAIが担当でない人が紛れ込んでいないかをチェックします。AIは道具も1つ1つ識別して、正しい手順で正しい道具の使い方をしているかもチェックするのです。元記事ではAIがチェックしてアラートを上げるだけですが、もっと踏み込んで、経験の浅い作業員には次の作業手順をメガネ型ウェアラブル端末にAR(Augmented Reality)を使って表示したりすることもできるかもしれませんね。

 でもこのテクノロジー、工事現場は危険がいっぱいで現在も作業員管理がしっかり行われているので違和感を感じないかもしれませんが、オフィスに置き換えてみればどう思いますか。お昼ご飯どきは社食が混むからと少し早めに昼休みを取ったり、喫煙所で同期に会ったのでそのまま話し込んだり、お腹を壊していてトイレに篭っていたり、昨日飲みすぎたので会議室を借りて仮眠をとっていたり...そんなことが全てカメラで撮影されクラウド上のAIが分析してサボっている社員と上司のスマホなどに警告が届く...この勤務実態情報はそのまま査定に影響...なんてことは容易に想像がつきます。直感的には、このテクノロジーは雇用主にすれば有り難い機能かもしれませんね。社員のサボりをチェックして合理的に人件費を下げることができますし(社員も映像の証拠を突きつけられると反論できないでしょう)、生産性も上がるかもしれません。

 しかしよく考えてみると、オフィスにこのテクノロジーを取り入れて生産性が上がる職場と下がる職場があると思います。生産性が上がる職場は淡々と作業する仕事が多い職場(まるで工場の作業員のような)で、サボりの検出だけでなく工事現場の例と同じように作業をいちいちAIがチェックするわけですから、社員は常にAIの目(とその向こうに経営者の目)を感じながら作業します。そうすることで、先に述べたようにサボった社員の給料を下げて人件費を削減し、見張りの目を意識させることで生産性を上げることができるでしょう。一方で頭脳系、特にクリエイティブ系の職種の場合、アイデア出しをしている時など見た目にサボっているのと変わらない場合もあります。そういう職種は、これまでも成果主義や月俸制など作業時間や作業量にリンクしない給与体制がとられてきました。極端なことを言えば、革新的なアイデアや製品を思いつきさえすれば、会議室で寝てばかりでもいいのです。実際に仕事をしている身からすれば、頭脳系の仕事はこのカメラとAIによる監視システムを取り入れてもうまくいくはずがないと思いますが、経営者が皆そう思うかどうかは分かりません。特に現場をよく知らない経営者や人事系の人の場合、社員を監視して管理できるなんて素晴らしいと十把一絡げにして、うっかり導入してしまいかねない気がします。

 ここまで書いてきて思い出したのは、実は以前にも同じような趣旨の記事を書いたことがあったことです。その時思ったのと同様に、テクノロジーが行きすぎた社会は、ジョージ・オーウェル氏の「1984年」のように人が「ビッグ・ブラザー」の監視下に置かれる「ディスユートピア(ユートピアの反対)」を生みかねません。このカメラとAIを使用した監視システムも「現代版・禁断の果実」で、お題目としては社員の安全を監視して事故を防止できるなんて綺麗事が言われるでしょうが、総監視社会というディスユートピアへの危険な第一歩でもあります。

2017年5月19日金曜日

ベーシックインカムはAI失業時代の救世主か

ベーシックインカムはAI失業時代の救世主か | 政策 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準:

 前回、全ての仕事はいずれロボットやコンピューター・AIに奪われる可能性があり、ロボットやコンピューター・AIが稼ぎ出す富をいかに人類に分配するのかという制度面が重要だという話をしました。そこで、今回はそのポスト・シンギュラリティ(技術的特異点、AIに知能が人類の知能のそうわをうわまわるとされる2045年前後)時代の富の分配制度として有力な「ベーシックインカム」について、平松さわみ氏の記事を元に考えて見たいと思います。

 「ベーシックインカム(BI : Basic Income、最低所得保障)」とは、仕事をするかどうかにかかわらず、国がすべての個人に無条件で一定の所得を支給するという制度です。そう聞くと共産主義や社会主義のように思えますが、あくまでも資本主義の中の政策の1つであり、ざっくり言うと共産主義・社会主義がみんなで仕事をしてみんなで富を分け合おうというのに対し、BIは仕事はロボットやコンピューター・AIがやるのでその成果を等しく分け合おう、もっと言えば「仕事と収入を切り離す」という発想なのです。

 直近では2016年6月にスイスでBI導入の是非を問う国民投票が行われました。大人には月2,500スイスフラン(約28万円)、子どもには625スイスフラン(約7万円)を支給するというBIの政策ですが、この提案は残念ながら否決されたものの、世界中で注目され23.1%もの有権者が賛成票を投じました。自分はこの判断は賢明だと思います。というのも先に述べたように、ロボットやコンピューター・AIなど富を生み出す仕組みがあってのBIであって、富を生み出す主体が相変わらず人間のままで早急にこの制度を導入すると、BIのキモである労働と収入の切り離しがされず、共産主義・社会主義との境が曖昧になってくるからです。

 スイスの国を挙げてのBI導入はまだ時期尚早という判断が下されましたが、給付者を限定した形での社会実験はいくつか始まっています。フィンランドは今年から失業者2000人に毎月560ユーロ(約7万円)を2年間支給する実験を開始し、カナダのオンタリオ州は今春から低所得者4000人にBIを実験的に導入しています。

 実はBIは新しい提案でもなくて、すでに18世紀末の哲学者トマス・ペイン氏が「21歳になったら15ポンドを受け取る」という制度を提唱しているだけでなく、1960~70年代に家事労働への賃金を求める女性解放運動の中でも議論されました。いま再びBIが議論されるようになったのは、2つの社会情勢が大きくそれをドライブしているからです。1つ目は、格差社会(失業・貧困)です。一定の金額を全員が受け取るというのは、少なくとも貧困層にとってのセーフティネットになる可能性があります。そして2つ目が、ロボット・コンピューター・AIの技術の発展により、従来型の雇用が奪われる可能性です。例えば、駒澤大学・井上智洋准教授は、AIの普及により多くの人が失業する時代は、生活保護のように給付を受ける人を選ぶ制度は行政コストがかさむので、単純に全員にお金を配るほうが合理的だと述べておられます。ロボットもそうですが、特にAIやコンピューターはその技術を持つ者と持たざる者の生産性の差は雲泥の差になるはずで、そういった技術を駆使して大きな富をなす人と仕事を奪われて失業する人の格差たるや、とんでもなく大きいものになるでしょう。

 先にも書きましたが、自分はBIは「仕事と収入を切り離す」ことなのだから、ロボットやコンピューター・AIが人間の仕事を肩代わりしてくれる社会が来ないうちにBIだけを導入するのは本末転倒だと思っています。もちろん、BIの議論をドライブするのはAI失業時代の到来だけでなく、格差社会の是正という面もあるので一概にダメとは言えませんが、大きな問題があって大掛かりな実現はまだ難しいだろうと思うのです。その問題は、勤労意欲の問題と財源の問題です。いずれもロボットやコンピューター・AIが富を稼ぎ、それを人間に分配するという前提なので、現段階での大掛かりなBIの導入は富の稼ぎ手がいなくなってしまいます。また「働かざる者食うべからず」という古い価値観も依然として残っているので、貧困者など支給先を絞った給付金の方がまだまだ支持を得やすいでしょう。

 いずれロボットやコンピューター・AIが富を稼ぎ出し、人類にその富を分配するというBI社会は訪れるでしょうが、それまでの道のりは茨の道だというのも確かなようです。様々な地域での社会実験を通じて経験を積んで世界全体で少しずつそれへ向かって適応していかないと、バラ色の未来を夢見て、逆に暗黒の時代が訪れるリスクがあるでしょう。

2017年5月17日水曜日

AIの雇用破壊は資本主義の「禁断の果実」だ

AIの雇用破壊は資本主義の「禁断の果実」だ | 国内経済 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準:

 実は、ブログサークルというSNSで懇意にして頂いているトニーマサキさんが、この山ちゃんウェブログの「わたしの仕事、ロボットに奪われますか?」という記事をベースに関連記事を書いて下さりました(↓)。
  『ロボットに絶対に奪われない仕事』をご存知ですか?
自分は聖職者のようないくつかの職業はロボットやコンピューター・AIには無理だろうとタカを括っていたのですが、それも取って代わられる可能性もあると指摘されています。

 そこで今回は、大阪大学准教授の安田洋祐氏と経済学者トーマス・セドラチェク氏の対談記事を元に、全ての仕事がやがてロボットやコンピューター・AIに奪われるんだという前提に立って、破滅へと突き進む人類の矛盾について考えてみたいと思います。

 まず最初に、労働と余暇について面白い指摘がされています。それは「工業化」が人が労働と余暇を分ける原因になったという指摘で、大変面白い寓話が紹介されていますので、ここにそのまま紹介します(↓)。

お金持ちの西洋人が、釣りをしている貧しい男に近づき、何をしているのか尋ねます。男が「釣りだ」と答えると、お金持ちは、「網を買って事業にすべきだ。そうすれば人を雇って魚を取ることもできるぞ」と提案する。「何のために?」。男が聞くと、お金持ちは「仕事を引退してから釣りを楽しむためさ」と答える。

もちろんこの寓話における貧しい男は工業化前の人を、お金持ち西洋人は工業化後の人を象徴しています。工業化後の人の生きる意味(目的)は工業化前の人の仕事そのものだったのですから、工業化によって人が生きる意味を見失ったという言い方もできるでしょう。

 また、アリストテレスが現代に蘇って私たちが働く姿を見たら、きっと困惑するだろうとも指摘されています。つまり、頭脳系の仕事をする人たちは、そのほとんどの作業時間を単なる「情報の移動」に費やしています。コンピューターとにらめっこして何かを入力し、電話や会議で情報のやりとりをする。アリストテレスが見たら、これはきっと娯楽だと思うでしょう。我々が余暇に何をするかといえば、ジョギングしたり庭の手入れをしたり、料理したりします。アリストテレスにとってこれは仕事でしょう。つまり、何が遊びで何が生きるために必要な活動なのかというのは、時代によってこれほどまで真逆なのです。

 そう、アダムとイブの物語で禁断の果実は過剰消費でしたが、我々にとっては「科学技術(工業化・IT化・AIの発展)」こそは禁断の果実と言えると思います。つまりこの「現代版・禁断の果実」は、私たちが仕事から解放されたいと望み、現実に多くの苦しい作業や面倒な作業から解放してくれたモノですが、哲学的な観点からは歩みを緩めるべきだと感じさせるのです。芸術や哲学の世界では、自分に従うようエネルギーを注ぎ込み過ぎると、最終的には人間がそれに従わされるようになる「主従逆転」現象が起きるというのです。ターミネーターシリーズはじめ未来技術を扱うSF映画のほとんどは、人類は自らを破滅に追い込む物を創り出してしまったという主題ですし、プラハのゴーレムも呪文を唱えると泥人形がゴーレムとなってユダヤ人を守ってくれますが、使い方を誤ると狂暴化しユダヤ人を襲います。

 これまで工業化・ロボット化が人間の肉体労働を肩代わりし、IT革命で知的労働のうち単純な仕事をコンピューターが肩代わりしてきました。そして、シンギュラリティ(技術的特異点、AIの知能が人類の知能の総和を上回るとされる2045年前後)と呼ばれる時代には、AIが人間の高度な知的労働をも肩代わりするようになるでしょう。もちろん、それは仕事から解放されたいと人間が望んだことが叶ったわけです。そうなった時、人間ははたと気づくのでしょう。人類が仕事から解放されたのは初めてだと。

 仕事から解放された人間は一体どうなるのでしょうか。いわゆる「仕事」はロボットとコンピューターとAIが全てやってくれるので、人間には余暇しか残されず、そんな状態で果たして生きる意味を持ち続けられるのでしょうか。余暇は仕事があるからこその余暇です。365日のうち100日の休みは楽しく過ごせますが、365日全て休みだと本当に楽しいでしょうか。

 そして、富の分配は一体どうなるのでしょうか。その答えになりうる一つの仮説が「ベーシックインカム(最低限所得保障制度)」です。人間の代わりにロボットやコンピューター・AIが働き、得られた富は人類に等しく配分するのです。ポスト・シンギュラリティ時代の「富の分配」は、今のうちからしっかり考えておく必要があります。ここがしっかりしていないと、AIを駆使する一部の人が富を独占し、ほとんどの人はお金もなく、働いてお金を稼ごうにも仕事もないということに陥るのですから。ベーシックインカム以外のの答えとして、利益を社会全体で共有するという考えも提唱されています。自分のイメージは、ベーシックインカムは仕事(労働)が人間からロボットやコンピューター(AI)に移る過渡期に、「資本共産主義」とも呼べる利益を社会全体で共有する仕組みは、完全に仕事が人間の手を離れた後に適していると思っています。

 人間は、長らく仕事から解放されたいという大きな目的に向かって、科学技術を発展させてきました。蒸気機関もロボットもコンピューターもAIも、いかに人の仕事量を最小化してアウトプットを最大化するかに腐心してきた結果なのです。そして今、AIが空前絶後のスピードで発展しています。この「現代版・禁断の果実」の怖いのは、非常に強力なモノを創り出せるのにそれを止める術がないことなのです。様々な文化圏の神話で伝えられるのは、己を破滅させるのは己の強さです。私たち人類が本当に怖いのは自分たちの弱さではなく自分たちの強さなんだという言葉に、科学技術に関わる端くれとして背筋がゾッとします。

身代金支払いは少数派、大半はビットコイン使えず

身代金支払いは少数派、大半はビットコイン使えず - Bloomberg:

 先週末からWindowsの脆弱性をターゲットにした「ランサムウェア」が世界規模で猛威を振るっていて、日本では日立やJR東日本などの大企業ですら被害が発生しているそうです。今回問題になっているランサムウェアに感染すると、こんな画面(↓)が表示され、パソコン上のファイルが暗号化されてしまい、身代金を払わないと暗号化されたままだぞ(つまりそれらのファイルは失われたと同じだぞ)と脅迫してくるのです。マルウェアと呼ばれるコンピューターウィルスの一種で、Ransom=身代金を要求してくることからRansomwareと呼ばれます。今回のランサムウェアは、WannaCrypt, WannaCry, WannaCryptor, Wcryなどという名前で呼ばれており、とんでもないスピードで感染した模様です(そのスピード感をアニメにした方がいましたので、興味のある方はこちらへどうぞ)。

 ところで今回のランサムウェアは、身代金として72時間以内に仮想通貨ビットコインで300ドル(約3万4000円)相当を払うよう要求されます。7日の期限が切れても支払わなければ、暗号化されたファイルは二度と復元できないと脅迫してきますが、実際のところこの身代金を払った人は少ないのだそうです。ビットコインの不正使用を追跡するエリプティック・エンタープライゼズによれば、15日の早い時点までに支払われた身代金は約5万ドルにとどまると言います。それから時間が経っているので、もう少し金額は増えているかもしれませんが

 Windowsパソコンのユーザーが皆しっかりとMicrosoftの修正プログラムを適用したり、ウイルス対策ソフトの定義を最新に更新してから、実際のところ感染した人は少なかったのだと思いたいところですが、実態はさにあらず。しっかり対策していない人は大抵はコンピューターに疎いので、ビットコインでの支払いをすることがそもそもできないのです。もっと言えば被害に合う人は「ビットコイン?なにそれ?美味しいの?」というレベルの方が多いので(失礼!)、犯人たちは画面上(↑)に支払い方のリンクまで付けたものの、それに従ってビットコインで支払いできるほどコンピューターリテラシーは無かったのです。なんとも皮肉なことですね。

 ちなみにこのウイルスに感染してしまうと、もう手の打ちようがないそうで、感染前にしっかり手を打っておくことが必要なようです。情報処理推進機構(IPA)のWebサイトから、Microsoft Windowsのバージョンごとに修正プログラムへのリンクがありますので、今もって未対策という方はこちらからどうぞ。

東芝大失敗の研究 〜組織は「合理的に」失敗する

東芝大失敗の研究 〜組織は「合理的に」失敗する(菊澤 研宗) | 現代ビジネス | 講談社(1/3):

 おととい15日、東芝は2017年3月期の連結業績について、純損益は9,500億円の赤字と発表しました。またしても監査法人から「適正」の見解を得られないままの発表で、異例の事態が続いています。今回はそんな東芝の迷走ぶりが、先の太平洋戦争における旧日本軍のガダルカナル戦と同じメカニズムによって起こったものだという菊澤研宗氏の記事が興味深かったので、自分の見方と合わせてご紹介したいと思います。

 ガダルカナル戦は、ミッドウェー海戦と合わせて太平洋戦争におけるターニングポイントと言われ、海軍がミッドウェーで破れ、陸軍がガダルカナルで破れたことで、戦局が大きくアメリカ側に傾きました。そんなガダルカナル戦は、制空権を得た米軍が近代兵器を駆使して効率的に日本軍を叩いたのに対して、日本軍は精神主義にもとづいた非効率な白兵突撃に固執し続けた点で、軍部の愚かさの象徴とも言われています。

 ガダルカナル戦の緒戦・イル川渡河戦において、一木支隊2,300人は1人あたり小銃弾250発という軽装のまま、対戦車砲や榴弾砲など圧倒的火力を準備して機関銃座陣地まで築いていた米軍10,900人に銃剣突撃を行ない、手痛い敗北を喫しました。それもそのはず、一木清直大佐が得ていた情報は、連合軍の兵力は約2,000で島からの脱出に腐心しているというものでしたから、手ぐすね引いた敵の目の前に裸同然で突撃したわけです。しかし敵の正確な戦力が分かったところで、同じ愚を繰り返してもいたずらに兵士の命を失うばかりで相手に打撃を与えられないのは明らか、戦略の大転換かもしくは撤退が行われないとおかしいと思いませんか。しかし実際の陸軍は、続いて上陸した川口支隊、第2師団と兵力の順次投入という愚を犯したばかりか、相変わらず非効率的な銃剣突撃を繰り返し、最終的に完全に撃滅されたのです。

 歴史を知っている我々からすれば、陸軍のこの判断は愚かだと思うかも知れません。しかし当時の日本軍は、白兵突撃戦術を簡単に放棄できない、あくまでも白兵戦術を貫き通すことが合理的な状況にあったのです。菊澤氏はこのことを「合理的な不条理」と呼んでおり、それは日本軍が日露戦争での成功以来、この戦術に特化した研究開発・教育・設備投資・人事・組織文化のために多大な投資を行なってきたためだと言われています。つまり、多くの時間とお金・人材をかけてきた「白兵突撃戦術」を、相手の圧倒的な火器という戦況だからといって簡単に変えてしまうには、多くの利害関係者を説得するための膨大な交渉・取引コストが必要になってしまう。そのコストはあまりに高く、ほんのわずかでも勝利の可能性があるなら、どんなに非効率で無謀に思える戦術であろうとそれを変えないことが合理的だったというわけです。

 「合理的な不条理」に対する菊澤氏の説明は、「取引コスト理論」が元になっています。この理論はノーベル経済学賞を受賞したロナルド・コース氏とオリバー・ウイリアムソン氏によって提唱されたもので、すべての人間はスキがあれば利己的利益を追求する機会主義的な存在と仮定され、そのため見知らぬ人同士で交渉取引する時は互いにだまされないよう駆け引きが起き、この駆け引きは本来は不要なコストだという理論です。そういった目に見えないコストを発生させないために、取引が不要なよう現状維持という強いドライブがかかるというわけです。

 しかし自分は「合理的な不条理」は、基本的な心理学における「一貫性の原理」で十分に説明することができると思います。一貫性の原理は、この山ちゃんウェブログで交渉に関する記事を書いた時に少し取り上げましたが、人は自分の行動・発言・態度・信念などに対して一貫したものとしたいという心理が働くというものです。この心理を逆手に取っているのが試食とか試着とかで、試食で「美味しいね」と言ってしまったら、その言葉と一貫性を保ちたいという強い心理が働き、次の「1ついかがですか」に対してNoと言いづらくなってしまうのです。この「一貫性の原理」は通常は個人の心理に関する原理として説明されますが、自分は企業や軍隊などの集団においても成り立つ原理だと思うのです。つまり、帝国陸軍としては白兵突撃戦術に特化した多大な投資をしてきたのに、ガダルカナル戦でその戦法を変えてしまうのは一貫性がない、一貫性を保とうとするならバカのひとつ覚えのように白兵突撃を繰り返すしかないということになるのです。冷静に考えれば、試食をしたからといって買うかどうかは別の判断のはずなのですが、一貫性の原理が働いて「引くに引けない」状態となってしまう。ギャンブルがやめられないのも、スポーツ選手の引退の決断が難しいのも、それまでの投資や努力が大きければ大きいほど過去の自分を否定する決断を下すのは難しく「引くに引けない」心理におちいってしまいます。

 ここまで長い前置きをすれば、東芝がガダルカナル戦における帝国陸軍と同じように「一貫性の原理」にハマってしまって、原発事業から引くに引けなくなってしまったことが理解できます。東芝は10年ほど前に、半導体と原子力への選択と集中という戦略を掲げます。この戦略のもと2006年に6400億円という資金をつぎ込んで、米国の原子力発電事業会社ウエスチングハウス(WH)を買収します。この金額は当時でさえも割高だと言われましたが、東芝経営陣は自らの一貫性を保つため、逆に2015年までに原子力発電事業の売上高を1兆円にする事業計画をぶち上げます。

 しかし、実際にはその後のリーマンショックと福島第一原発の事故により、原発事業の環境は大きく変わります。一木清直大佐が米軍の火器と兵力を前に手痛い敗北を喫した時と同じように、この時の東芝経営陣はこのままの戦略で原子力を押しても将来がないことを認識したはずです。しかし、帝国陸軍が撤退どころか次々と兵力を順次投入して、完全に撃滅させられるに至るのと同じように、東芝も原発事業から撤退どころか、2015年12月、機器から工事までの垂直的一貫体制を確立するんだと、米国の原発建設会社「ストーン・アンド・ウェブスター」(S&W)買収に突き進みます。まさに「引くに引けない」状況におちいったのです。その後の推移はご存知の通り、白物家電事業や医療機器事業を次々と手放しただけでなく、奇しくも当初の戦略通り東芝最大の収益源に育っていた半導体事業をも売却せざるを得なくなったのです。原子力事業から引くに引けなくなった東芝は、まさに白兵突撃戦術そしてガダルカナル島から引くに引けなくなった帝国陸軍と同じ「一貫性の原理」の罠にはまってしまったのです。

 なんとも恐ろしい「一貫性の原理」。これにハマってしまうと、一個人がギャンブルや株投資で資産を失ってしまうだけでなく、一流巨大企業でさえもこれほど傾いてしまうのです。重要な判断をする時、一貫性の原理の罠にはまっていないかどうか自問することがとても重要だと思います。「せっかくだから」「これだけ○○してきたんだから」「ここまできたら引けない」といった言葉が出るときは罠にはまっている証拠です。罠にはまらないためには、次の言葉を繰り返し唱えてください。その魔法の言葉とは
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....
....
「それとこれとは話が別」

2017年5月16日火曜日

40代独身者が「幸せになれない」根本原因 | ソロモンの時代―結婚しない人々の実像―

40代独身者が「幸せになれない」根本原因 | ソロモンの時代―結婚しない人々の実像― | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準:

 今回の話題はズバリ「結婚」。荒川和久氏の記事を元に、結婚と幸せが意外なまでに結びついているというお話です。自分は幸いにも(なのか?)結婚していて2人の子供がいるのですが、振り返ってみると、人生の選択肢として結婚することを選んだのは、大人になると結婚するものという固定観念にとらわれていたような気もします(あとで出てきますが「結婚規範」と言います)。もちろん結婚して幸せに暮らせているのでそれで良かったのですが、周囲を見渡してみると、結婚しないという選択をした人もそれはそれで幸せに暮らしているように見えます。

 しかし荒川氏の言によれば、未婚者は既婚者と比べて不幸度が高い(幸福度が低い)とよく言われるそうです。あながち根拠のないことでもなく、未婚と既婚・男女年代別のアンケート調査によれば、確かに既婚者のほうが幸福度が高く未婚者は不幸度が高いという結果が得られています(↓)。結婚生活が長くなってマンネリになるのか、結婚者の幸福度は年代が上がると少し下がる傾向がありますが、ほぼ全年代で8割以上が幸福と答えています。一方で、未婚者が不幸だと思う割合はなぜか40代がもっとも多く、40代未婚男性に至っては幸福なのはたったの36%に対して、不幸と感じる人は28%と全世代・結婚未婚にかかわらず最大の数字になっています。20-30代のうちは結婚 "できない" のではなく "しない" だけだと強がっていたのが、この年代になるとこの先も結婚 "できない" という現実に直面して落ち込むのかもしれません。

 荒川氏によれば、未婚者の「不幸感」は、結婚はするべきものという「結婚規範」に起因しているのだそうです。確かに自分も大人になったら結婚するものだと思っていましたし、結果的にその通りに結婚したのでいいのですが、もし40代になった今も未婚だと何か取り残されたような気になっていたと思います。内閣府が2015年に実施した「少子化社会に関する国際意識調査報告書」(↓)は、日本・フランス・スウェーデンの3カ国だけの調査ですが、日本は結婚すべきという結婚規範を持つ人の割合が高い傾向が見て取れます。それよりも特筆すべきなのは、フランス・スウェーデンは結婚している人は結婚すべきと思う人が多くても、未婚の人は結婚すべきと思う人は少なく、自らのポリシーで結婚するかどうかを選択しているのに対し、日本の場合は既婚者も未婚者も結婚すべきという人が多く、未婚は自らの選択ではなく、本当は結婚すべきなのにできていないという「落ちこぼれ感」にとらわれている様子が見て取れることです。この「落ちこぼれ感」は強い「不幸感」につながります。人は皆大人になったら結婚するものなのに自分はできていない、重要な何かが欠落しているんじゃないかというわけです。

 そんな「落ちこぼれ感」を払拭しようという「強がり」とも取れる心の動きが見て取れるのが、既婚者と未婚者の「自己有能感」と「自己肯定感」の調査結果です(↓)。「自己有能感」というのは仕事などで自分は他人より優れているという自負のことで、「自己肯定感」は自分で自分を認めているかどうかという視点で、幸福感に直結すると言われています。なんとも面白いのは、程度の差こそあれ男性・女性によらず、未婚者は自己有能感が高いのに対して自己肯定感が低い、既婚者はその上下関係が全く逆だということです。つまり、未婚者は自分は結婚できていない「落ちこぼれ感」を払拭しようと、結婚で遅れを取った分は仕事で見返してやると心理が働き、自己有能感が高まるのではないでしょうか。一方で既婚者の自己有能感は、なんと面白いことにマイナスを示しています。例えば、例えば保育園へのお迎えや子供が急に熱を出したりなど、仕事上はむしろ周囲に迷惑をかけることが多く、こなす仕事量も少なめだと思っているのかも知れません。

 日本では結婚はすべきものだという考えがまだ支配的で、その考えに打ち勝つほどの強いポリシーを持って未婚を続けるならいいのですが、独身にこだわりを持たない人は結婚 "できない" 自分に落ちこぼれ感を抱いている、その劣等感を埋めようと仕事に没頭するという構図が見て取れるようです。荒川氏は「フォーカシング・イリュージョン」という言葉を出して、「結婚=幸せ」というのは「いい学校に入る=幸せ」「大手の会社に入る=幸せ」と同じように、思い込みから生じる幻想だと言われています。

 しかし、自分は幻想ではないと思っています。以前にも、「いい学校に入る→年収が多い→幸せ」という三段論法はどうやら正しそうだということを書きました。データに裏付けられていることがその根拠ですが、荒川氏は「結婚=幸せ」を裏付けるデータをこんなにも示した上で、幻想だとは論理が飛躍しすぎている気がします。価値観の多様化なんてスローガンは、こと日本社会の結婚問題に関しては絵に描いた餅で、既婚・未婚を問わずにみんなが結婚すべきという結婚規範に縛られているのが日本社会の現実なのです。よく既婚者の人がお酒の席などで、結婚は人生の墓場だとか奥さんの愚痴を言ったりすることがありますが、未婚の方はぜひそれを真に受けないで頂きたいと思うのです。そういう愚痴も含めての「幸せ」なのであって、結婚生活の愚痴が言えない人に対する歪んだ優越感なんだと、明日からの婚活にもっと力を入れるくらいが丁度いいのです。だって、既婚者の幸福感の高さ、自己肯定感の高さは数字が示しているんですから。それは何だかなあという方は、ぜひフォーカシング・イリュージョンを打ち破って、仕事や趣味やボランティアなど、結婚生活以外の幸せを見つけるようにしましょう。フォーカシング・イリュージョンという幻想さえ討ち破れば、「結婚≠幸せ」になるのですから。

2017年5月15日月曜日

高齢化社会の必需品⁉︎SOS発信や通話ができるスマートな杖「iCane」がシニアをサポート

高齢化社会の必需品⁉︎SOS発信や通話ができるスマートな杖「iCane」がシニアをサポート | Techable(テッカブル):

 今回はちょっと面白い製品を見つけたので、ご紹介したいと思います。その名も「iCane」。スマートデバイスというかIoTデバイスというか、イタリアのスタートアップが開発した、GPSやSIMカードを内蔵したスマートな「杖」なのです(↓)。

 iCaneには、取っ手にはSOS発信・通話・懐中電灯という3つのボタンが付いており、「スマートさ」はSOS発進と通話の2つの機能ということです。通話先の電話番号はiPhoneかAndroidのアプリを使って3つまで登録でき、通話ボタンを1回押せば最初の電話番号に、2回押せば2つ目の電話番号にかかるようになっています。また、SOS発進ボタンは2秒長押しすることであらかじめ登録された連絡先に電話がかかり、相手が取るまで掛け続けるという仕様なのだそうです。この操作性がわかりやすいかどうかは微妙ですが、ボタンを多くしても混乱しそうですし、SOSボタンにちょっと触れたぐらいで通話がかかると誤報が多くなっていざという時に機能しないと困りますし、しかし本当に緊急の場合は簡単に通報できなければなりません。今後の改善ポイントは、この辺の操作性かもしれません。

 これだけならあまり面白くないのですが、iCaneにはGPSも搭載していて、持ち主の居場所をリアルタイムに確かめることができるのです。もちろん想定されるのは「徘徊」。家族にとって、いつの間にか家を出て行って徘徊するお年寄りは心配のタネですが、この杖を持って出て行くぶんには警察沙汰になる前に追いつくことができるでしょう。もちろん、徘徊するようなお年寄りが忘れずにこの杖を持って行ってくれるかどうかはわかりませんが。あまり大した機能でないと思われる「懐中電灯」も、実はLEDライトになっていて、普通の懐中電灯よりも明るく足元を照らしてくれるので、ユーザーが日常的に重宝するのはこの機能でしょう。

 こんなにも使う人・買う人を限定的にターゲッティングした商品も面白いですね。この杖を使うのはほぼ間違いなくお年寄りでしょうし、買うのはその子供か孫でしょう。だからこそ連絡先の登録にはスマホアプリを使うのでしょうし、お年寄りがいつも手放さないものとして「杖」を選んだのでしょうね。

 日本でも子供の見守りのための仕組みを作る自治体の話をよく聞きますが、その場合によく問題になるのが「通信費」と「充電」だと思います。この2つの問題を考え、Bluetoothを採用するケースも多いと思いますが、このiCaneは、GPSとSIMカードを搭載してきました。Bluetoothのような電波の届く範囲を気にしたり、位置情報の曖昧さを気になったりせず、正確な位置情報をクラウド上のサーバーに送信し続けられるでしょう。それと引き換えに、スマホでGPSと4G通信を使うと電池の消耗が激しいことを考えると、通信費と充電という2つの問題が実際のところどうなのかは気になりますね。

 残念ながら、その辺のことが元記事には書いていないのですが、スマートウォッチが思ったほど爆発的に普及していかないのも「通信費」と「充電」の問題じゃないかと思います。スマートウォッチの場合はスマホを母艦にして、スマホとの間はBluetoothでつなぎ、スマホを経由してクラウドに情報を上げることで「通信費」問題を解決していますが、iCaneの場合はスマホを母艦にすることは前提に置けません(スマホを持ってくれるなら、スマホアプリで良いわけですから)。「充電」の問題は、この手のデバイスの普及を妨げる常についてまわる問題ですね。人はこれまでの生活習慣の中で、時計を充電することに慣れていませんし、杖を毎日充電することにも慣れていません。従来の生活スタイルを不便な方向に変えないといけないのが、普及の大きな妨げかもしれません。この杖を充電する専用のスタンドがあって、家に帰ったらそこに杖を立てかけることで充電されるような仕組みが必要でしょうね。

2017年5月14日日曜日

ジャーナリスト「胸が張り裂けそうになった」シリア難民キャンプで4歳の少女がとった“絶望の行動”とは?

ジャーナリスト「胸が張り裂けそうになった」シリア難民キャンプで4歳の少女がとった“絶望の行動”とは?:

 今回の元記事は佐藤Kay氏による2年も前のものですが、未だ収束を見せないシリア騒乱の中にあって、なんの罪もない子供達の姿に胸が痛くなった写真と言葉を紹介したいと思います。シリア騒乱の始まりは2011年3月15日と言われており、現在も反政府運動およびシリア政府軍と、シリアの反体制派による武力衝突は続いています。

 まず最初は元記事でも紹介されているこの写真(↓)。トルコにある新聞社「Turkiye」のカメラマン、オスマン・サジリー氏が撮影したものです。サジリー氏の言葉によれば、「小さな女の子がいたので望遠レンズで撮影しようと思ったんです。でもなぜか、その子はくちびるをギュッと結んで、手をゆっくりと宙に突き出したんですよ」。場所はトルコとの国境近くにあるシリアのアトメン難民キャンプ。子どもたちにカメラを向けると、恥ずかしがって逃げるか無邪気な笑顔を返してくることが多いのだそうですが、この子は望遠レンズをつけたカメラを銃と勘違いしたのでしょう。写真の少女はアディ・フディアちゃん、当時4歳です。たまたま生まれた環境が戦火にまみれた国だったために、恐怖と絶望の毎日を過ごす少女。降伏を表すげんこつを突き上げたポーズも、愛らしい大きな瞳は強い意志を持っているかのようにも諦めの境地のようにも見えます。サジリー氏がこの写真を撮影した時に胸が張り裂けそうになったと言っているように、我々も彼女の瞳から強いメッセージを感じると思います。

 もう一つは今回の元記事とは違うWorld Observer Onlineの記事からなのですが、戦乱で傷付いた3歳の少年(↓)が最後に残したとされる言葉です。その言葉とは
  ”سأخبر الله بكل شيء“
  (全部神様に言いつけてやるんだから)
内戦が引き起こす痛みと苦しみ、人々の悲しみと怒り、戦乱の背景にある不条理と矛盾もを想起させる強力な言葉です。少年の名前は伝えられていませんが、この言葉を残した後少年は息を引き取ったとのことです。

 今回ご紹介した2つのエピソードは、なんの罪もないのにシリア騒乱の戦火の犠牲者になった幼い子供たち。いま日本の周囲を見渡してみても、北朝鮮を中心に一触即発の状況があります。北朝鮮とアメリカの意地の張り合いは、子供達の未来に暗い影を落としかねません。感情やプライドで安易に銃やミサイルを打つことなく、テーブル上でギリギリまで理性的な交渉をお願いしたいものです。

2017年5月12日金曜日

スナチャがインスタ「ストーリー」機能に完敗した理由

スナチャがインスタ「ストーリー」機能に完敗した理由 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン):

 今日はもはや社会現象となって久しいSNSの世界で、インスタグラムとスナップチャットの確執の話を、Tom Ward氏の記事を遠藤宗生氏が編集されたものを元に考えて見たいと思います。

 Ward氏が報じているところによれば、8か月前に導入されたインスタグラムの「ストーリー」機能がスナップチャットよりも人気を博しているのだそうです。すでに1日の利用者数はスナップチャットの1億6000万人を上回って2億人に達しています。絶好調のインスタグラムに対し、スナップチャットは閲覧数が15%も減少している(テッククランチ)とかスナップチャットストーリー1件に対する平均ユニークビューワー数が40%減少している(デルモンド)なんていう数字も出ており、その苦戦ぶりが顕著になっています。

 インフルエンサー(消費者の購買行動に大きな影響力を持つ人物)に対する調査によれば、スナップチャットの「ディスカバー」はニュースや大手企業の広告ばかりが見つかるのに対して、インスタグラムの方はインフルエンサーや一般人のアカウントを見つけやすくなっているのです。インフルエンサーはフォロワー数を増やして情報発信力を高めたい立場ですので、どちらが使われるかは歴然、そして彼らに影響を受けた一般の人がこぞってインスタグラムへ流入している(歴史を考えると、逆流入という言い方が適切かも?)のです。

 ところでインスタグラムといえば、その運営会社はフェイスブックですよね。フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ氏が2012年に10億ドルを投じてインスタグラムを買収した当時、インスタグラムはまだ設立2年・従業員13人・売上0円という、我々が聞いたこともないような会社でした。その後のインスタグラムの成長を見れば、ザッカーバーグ氏のM&Aの嗅覚の鋭さがわかりますが、そんなザッカーバーグ氏が2013年にスナップチャットCEOのエヴァン・スピーゲル氏に30億ドルの買収提案をした時、スピーゲル氏が拒否したことから、スナップチャとインスタグラムの因縁が始まっています。有名どころとして、フェイスブックに「秘密のスレッド(Secret conversations、一定時間でメッセージが自動的に消滅する)」が導入された時も、「スナップチャット潰し」だという話がたものでした。

 今回も、先行するスナップチャットを巨大な力で押し潰そうというザッカーバーグ氏の影が見て取れるような気がします。ただ自分には、スナップチャットとフェイスブックの関係が、かつてのネットスケープとマイクロソフトの関係に似ているような気がするのが気がかりなところです。ユーザーの立場としては、完全に囲い込まれて選択肢がなくなるのが一番イヤなことです。政治の世界と同じように、1社独占・1強というのは「神」を生み出しかねませんし、技術的な発展も鈍化してしまうでしょう。ユーザーとしても、フェイスブック・インスタグラム連合の1強にならないよう、スナップチャットに少し肩入れしようかなと思ってしまいます。

2017年5月11日木曜日

「学歴なんて関係ない」の真実 生涯賃金これだけ違う

「学歴なんて関係ない」の真実 生涯賃金これだけ違う|マネー研究所|NIKKEI STYLE:

 ゴールデンウィーク中、小さい子供には学力の前に「非認知スキル」を身につけさせることが大切だという記事を書きました。つまり、大雑把に言えば「学力→収入→幸せ」がさらに伸びて「非認知スキル→学力→収入→幸せ」となるんだという話でしたが、今回は「学力→収入」というのがそもそも本当なのかというお話です(学力と学歴は厳密には違いますが、学力の1つの指標として学歴を挙げてます)。元記事は、マネー研究所・川崎慎介氏によるもので、「人生丸ごとシミュレーション」の中の5回目の記事です。

 まず統計による数字のお話で、学歴と初任給の関係性についてです(厚生労働省 平成28年賃金構造基本統計調査結果↓)。高校卒・高専短大卒・大学卒と高学歴になるにつれて初任給は上がりますが、そもそも高卒の場合は大卒よりも早くから給料をもらい始めるので、同じ年齢になれば同じくらいの給料になるのかなという気がします。

 それでは年代別に学歴と年収を比べてみましょう(厚生労働省 平成28年賃金構造基本統計調査↓)。男性と女性でグラフが分かれていますが、やはり学歴が高い方が年収も多い傾向があります。それも、20代の若い時はあまり差が開きませんが、年代が上がるにつれてその差が歴然としてくるようです。男性で最大25%くらい、女性だと34%もの差が開いています。それでも、学歴が低い人はそのぶん早くから働き始めているので、大卒の人が働き始めるまでに多少の貯金をしているので、全体では思ったほど開かないのではないかという疑問もあるでしょう。

そこで、生涯賃金では差があるのかないのかを見てみましょう(賃金は厚生労働省 平成28年賃金構造基本統計調査から、退職金は平成25年就労条件総合調査から推定↓)。男性の場合、高卒と大卒との差は大体2割ほど、金額では4600万円ほどの差になります。女性でもやっぱり2割くらいは違ってきて、高卒が早く働き始めてもトータルで得られる収入は大卒の方がやっぱり逆転するようです。

最後にダメ押しのデータがあります。それは大卒といってもピンからキリまであるじゃないか、大卒を十把一絡げに高卒と比べると生涯賃金の差は2割くらいだけど最難関の有名大学ならもっと開くんじゃないかという疑問です。そこで、代表的な難関大学として東京大学・早稲田大学・慶應義塾大学の首都圏3大学の卒業生と大卒全体の平均を比べたのが下のグラフです(大学の卒業生の就職先データ(一部上場企業のみ、上位20社まで)を基にAFGが試算。ただし外資系企業や非上場企業については考慮なし、公務員や医師・弁護士も考慮の外なのであくまでも参考程度↓)。生涯年収は、早稲田が3億8785万円、慶応が4億3983万円、東大は4億6126万円。大卒の男性全体と比べて、さらに1億~1億7000万円も多くの収入を手にするのです。

よく「学歴なんて関係ない」という人がいます。個人個人を取り上げれば、学歴のない人も努力や才能で財産を築いている人もいるでしょうし、高学歴でもニートのような生活で収入のない人もいるでしょう。しかし統計的に全体を見渡したときには、やはりその差は歴然です。厳然たる事実として、高卒よりも大卒、大卒といってもFランなどと言われるところよりはやはり難関大学を卒業する方が、収入という目で見れば有利だということです。また、子供が中学生・高校生くらいの時期に「勉強する意味が分からない」と悩むことがあるかもしれません。そんな時には、勉強しておけばいずれ役に立つなんていう、間違ってはいないけれども刺さらない言葉より、刹那的ですがいい大学を出れば生涯賃金が2億円も違うと言う方が説得力を持つかもしれませんね。

2017年5月10日水曜日

木村岳史の極言暴論! - 先生じゃなければ奴隷、客に代わり要件を定義するSIerの愚

木村岳史の極言暴論! - 先生じゃなければ奴隷、客に代わり要件を定義するSIerの愚:ITpro:

 今回は木村岳史氏の記事を元に、それは理想論だけれどもというお話です。自分は電機メーカーのソフトウェア開発(それもIT系というよりはIoT系)という立場なので、一般のIT系システム開発とはちょっと違うのですが、それでもいわゆるシステム開発というのは共通しているので、現実問題として木村氏の「あるべき論」を実現するのは難しくても、そこを目指した改善が必要だと思いました。

 木村氏の主張は、一言で言うと「要件定義は顧客がやるもの」と言うことです。そして顧客ができないなら、SIerがコンサルとしてお金をもらってコーチするけれども、実行者はあくまでも顧客であるべきと言うことです。

 「要件定義」というのはシステム開発を行なう時の上流工程で、「What」に相当する部分です。「What」つまり「何を作るのか」、それが要件定義です。ちなみに自分のようなメーカー系開発は、その前にロードマップ策定・予算計画・予算採り・開発計画といったさらに面倒臭い上流工程がありますが、IT系の場合はそのフェーズはさすがに顧客側で行ないます。しかし、じゃあ何を作ろうかという段になって、顧客側で決められないというのが実態のようです。

 メーカー系開発と違うのは、ここで言う「顧客」という言葉が大きく2つの立場の人たちを指していることです。1つはユーザー部門、つまり今から作るシステムを使う人たち。もう1つはIT部門、SIerに発注してシステムを取りまとめる顧客側の部署です。顧客と一口に言っても、何を作りたいかを本当に知っているのはユーザー部門(今から使うシステムを使う人たちなのですから、当たり前ですよね)であって、IT部門の人たちはそのシステムで解決したいビジネスを詳しくは知らないのです。何を作りたいかを唯一決められるユーザー部門ですが、彼らはシステムやソフトウェアなどのことは全くの素人なので、実現不能なことやとんでもなくコストのかかる夢物語を語りがちです。そこで本来は、「ユーザー部門ーIT部門ーSIer」という関係性の中で、ビジネスの専門家のユーザー部門とシステム構築のプロのSIerの間に入るIT部門が両者の間を取り持って要件定義を進めるのが理想です。しかし、顧客のIT部門に要件定義を取りまとめる実力がないことが多々あるのです。SIerとしては、お金をもらって期限も決まっているのに何を作るか決まらないのは困るので、仕方なく要件定義を代行することになるというわけです。

 しかし「ユーザー部門ーIT部門ーSIer」という関係性なので、SIerからすればもっとも遠い立場(顧客の中でも上流の立場)のユーザー部門に「こういうのが作りたいんじゃありませんか」とお伺いをたてるのは、手続きだけでも面倒なものです(打合せスケジュールを調整してもらうのもIT部門経由でしょうから)。さらにユーザー部門の中でも担当者・管理者など様々な人が意見を言ってくるでしょうから、ユーザー部門の人間関係に疎いSIerがそれらを矛盾なくシステムに落とし込めるよう調整するのは至難の技です。つまり、人間関係など空気を読んで調整をする(単に役職だけでパワーバランスが成り立っていないのはどこの職場でも同じですよね)という、理系脳の代表格のSIerがもっとも苦手な仕事をやらされているということなのです。本来はお門違いですが、システム構築費用をもらっていて期日が決まっているので、仕方なく苦手な仕事をサービスで代行する羽目になるというわけです。

 なので、理想形は木村氏に言われる「要件定義は顧客がやるもの」、もっと詳しく言えば「要件定義は顧客のIT部門がやるもの」であるべきなのです。形だけでもIT部門の人が主導をとってユーザー部門へのヒアリングを行ない、その時にSIerを自らのサポート役として一緒に連れて行くのがまずはあるべき姿ではないかと思います。そして自分は、作るべきシステムの要件を清書してドキュメント化するのはSIerの仕事であってもいいと思います(ドキュメント化を顧客側がやると実現不可能な夢物語を入れられて後でモメる元です)。木村氏は大胆に、SIerはお金をもらってコンサルという立場でIT部門のサポートをするべきだと言われていますが、そこへ行くまでのステップとして、まずは主導は顧客のIT部門、それをサポートして文書化するのはSIerという姿が現実的かと。

 今回の話題は、ITシステムのプロジェクトが炎上するパターン「何を作っていいのかわからない」のからくりと、それに対して古くから言われている「あるべき論」でした。従来から言われていることではあっても、SIerがお金をもらってコンサルというところまで至っていないのが現状です。ひとまずは主導だけでも顧客IT部門でやってもらうことを目指し、顧客IT部門がその能力もやる気もないようならば、SIerは思い切って手を引くことも考えるべきです。イマドキは、馬鹿の一つ覚えのようにどんな仕事でも貰えるものは貰うという時代ではなく、SIerも利益を出していかないといけないはずですから。

2017年5月9日火曜日

米軍に学ぶ、相手に一瞬で伝わるメール術

米軍に学ぶ、相手に一瞬で伝わるメール術 | HBR.ORG翻訳マネジメント記事|DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー:

 今回はカビール・セガール氏のメール術に関する記事を元に、本当に相手に伝わるメールについて考えてみたいと思います。氏は米海軍で兵役を経て現在は予備役大尉ですが、兵役時代に軍隊特有のメール作法を身につけたのだそうです。軍隊では、1本のメールがうまく相手に伝わらないだけで人命に関わるような事態に発展する可能性もあるため、簡潔で伝わりやすいメールの作法というのがマニュアル化されているというのです。伝わりやすいメール術はきっとビジネスにも応用できるでしょう。

(1)件名にキーワードを含める
 忙しい人は、1日にメールを何十通あるいは何百通も受信すると言います。そんな中で自分の出したメールに対して相手にアクションをしてもらう必要がある場合、件名を工夫しないと、その他大勢のメールに埋もれてしまって読んでさえもらえないかもしれません。軍隊では、メールの性質を表す以下のようなキーワードを件名に入れるだそうです。
 ・行動(ACTION):受信者に何らかの行動を義務づける
 ・署名(SIGN):受信者の署名を要する
 ・情報(INFO):情報提供を目的とし、返信や行動は要しない
 ・決定(DECISION):受信者による意思決定を要する
 ・申請(REQUEST):受信者に許可や承認を求める
 ・調整(COORD):受信者による調整、または受信者との調整を要する

 例えば、上司に休暇の申請を出すときは「【申請】休暇」、上司が部下に週報の提出を求める場合は「【行動】週報」というようにしましょうと説明されています。実はこの手法は自分もよく使いますが、【】を使ってまで目立たせるのは、相手に何らかのアクションを求めるときのみ使用するようにしています。受信トレイの全部のメールが強調されていると、相対的に重要なメールが埋もれてしまうような気がするからです。したがって、件名にキーワードを含めることには賛成ですが、【】を使ってキーワードを強調するのは相手に行動を求める時だけにとどめ、単なる情報提供など行動を求めない場合は「[情報]プロジェクト進捗状況」のように[]くらいでとどめるといい気がします。

(2)はじめに結論を述べる
 軍隊では、BLUF(Bottom Line Up Front:はじめに結論を述べる)と呼ばれる、短くて歯切れのよい文を置くのだそうです。BLUFという軍隊用語はビジネスの世界では通じないので、元記事にも述べられている下の例のように、「結論」とか「要約」のような書き方で要点を述べるのがいいでしょう。

件名:[情報]在宅勤務

シャノンへ
結論:当社では12月1日から、従業員が在宅勤務できる日数を週3日から週1日に減らします。
背景
・この取り組みは、チームの士気を高め協働を促進するためです。
・経営委員会の全メンバーが、この決定を支持しています。

(3)無駄を省く
 メール本文は短いほうが伝わりやすくなります。軍では、全文を1つのウィンドウに納めて、受信者に画面をスクロールさせずに済むようにするそうで、これはビジネスの現場でもそのまま通用しそうな教訓だと思います。文章も短く簡潔にするために、文が長く曖昧になりがちな受動態は避けるのだそうです。例えば「工場はF18によって爆撃された」ではなく、「F18が工場を爆撃した」と書くのだそうです。

(4)添付ファイルよりリンクを使う
 無駄を省くという意味合いでもう一つのポイントは、添付ファイルを付けるよりも、ファイル保存先のリンクを貼る方が良いのだそうです。その理由の1つは相手の受信トレイの容量への配慮ですが、もっと重要なのは保存先ファイルの最新バージョンを常に共有できることです。つまり、メールを出した後にファイルを更新した場合も、再度メールを送信しなくてもリンク先が新しくなるので、相手は自動的に最新バージョンを取得できます。細かいテクニックですが、ファイル名にレビジョン番号や更新日を入れて「文書R5.txt」「文書20170409.txt」のようにすると、ファイル更新時にリンク先が最新バージョンでなくなるので、自分の場合は最新を「文書.txt」のようにして古いバージョンを「文書 BK 20170409.txt」のように残すようにします。添付ファイルをつけずにリンクを貼る方式のいい点はもう一つ、メールの宛先を間違えてもリンク先ファイルの権限は別に管理されているので、権限のない人が誤メールを受け取ってもリンク先を開けないのでセキュリティ上も安全だということです。

 米軍でのメールの作法は、読む人のことを考えてできるだけシンプルに何をして欲しいかを伝えるということに集約される気がします。このブログを読んで下さっている方ならお気づきかもしれませんが、自分の場合は、説明を繰り返したり言い回しを変えて強調しようという傾向があるので、どうしても冗長な文章を書く癖があります。メールの場合は、この癖が仇になりやすいので、まずは相手にスクロールさせない長さということに気をつけてみようかと思います。

2017年5月8日月曜日

もしシンデレラが男性だったら? 女の子に読んであげたい本『Good Night Stories for Rebel Girls』|ギズモード・ジャパン

もしシンデレラが男性だったら? 女の子に読んであげたい本『Good Night Stories for Rebel Girls』|ギズモード・ジャパン:

 今回はあの「シンデレラ」に男性版があったら(というか男女を逆転させたら)という、ちょっと面白い仮定のお話。Timbuktu Labsの公開した動画(↓)がなかなか考えさせられます。

 ストーリーは、まさにシンデレラのお話をそのまま男女入れ替えたような感じです。主人公の名前はシンデレラの男性版・シンデフェラ。イケメンのシンデフェラに嫉妬した兄弟からイジメを受けます。お城の舞踏会への参加もできない状況に追い込まれ涙しますが、そこへ現れた魔法使いのおじいさん(こんなところまで男女逆転!)が魔法でシンデフェラを王子様に変身させてくれ、無事に舞踏会へ参加が叶います。舞踏会ではお姫様のハートを射止め、12時のタイムリミットぎりぎりにガラスの靴を落としてシンデフェラはお城を後にします。お姫様は残されたガラスの靴を元にシンデフェラを突き止め、やがて二人は結婚して幸せな人生を暮らします。

 シンデレラが根強い人気を得ているのは、その美貌を武器にして「玉の輿」に乗るというサクセスストーリーなわけですが、男女逆転させただけで何だかザワザワした気になりませんか。シンデレラを娘に聞かせることに抵抗がなくても、シンデフェラを息子に聞かせるには抵抗がある気がします。

 その原因を考えてみると、男の子向けの童話は自らの努力の末に偉大な功績を成し遂げるというタイプのサクセスストーリーであることが多いと思います。それは、サクセスの主体があくまでも主人公の男の子ということです。一方でシンデレラは、あえて揚げ足を取る言い方かもしれませんが、自らの努力で貧乏やいじめの境遇を脱するのではなく、王子様に引き上げてもらうという虫のいいストーリーな訳です。「女」を武器に上流階級の男性のハートを射止めるという、一歩間違えれば娼婦か風俗を想起させるストーリーだということに気づきます。つまり男女を逆にすれば、シンデフェラは「男」を武器に上流階級の女性に取り入って引き上げてもらおうというホストかヒモのような気がしてしまいます。

 自分もやはり、息子には男を武器にして他人の成功に乗っかる人生より、自らの努力で成功を成し遂げて欲しいと思います。それに対して、娘には同じような人生を望んでいないのではないか、つまり例えば「玉の輿」に乗って、他人の成功に乗っかる付属物のような人生を望んでいるのではないかと自問させられます。

 実は、この皮肉に満ちた動画は、実在する偉大な功績を残した女性100人のストーリーをまとめた「Good Night Stories for Rebel Girls」という本の宣伝用に作られたものです。動画の作者であるエレナ・ファヴィッリ氏とフランチェスカ・カヴァッロ氏は次のように語っています。

幼い少女が読む本は王子様や兄弟、ネズミが助けてくれる本ばかり。女の子が自分の手で夢を叶えるストーリーなんてほとんどありませんでした。
小学校入学時点で女の子は男の子より自分に自信がなくなっているのですが、それは何故でしょう? 「目標を持てば叶えられる」と言いますが、目標となる人物を知る機会さえ与えられなかったら?

 お題目として男女平等とか男女同権とか唱えますが、幼い頃からシンデレラのようなストーリーを読み聞かせて、自分の努力ではなく他人の努力の結果の成功に乗っかることを教えられて育った女性が、本当の意味で男性と対等に渡り合った結果としての成功を得ることは難しいように思います。自分もシンデレラというお話に若干の違和感を感じていても、この動画を見るまではその正体に気づいていなかったような気がします。ものごとを見るとき、「逆にして見る」ことが本質を見抜くことに繋がるいい例のような気がします。

2017年5月6日土曜日

「マストドン」なぜ人気? 今のうちに押さえておきたい基礎知識とビジネス活用の可能性 - INTERNET Watch

「マストドン」なぜ人気? 今のうちに押さえておきたい基礎知識とビジネス活用の可能性 - INTERNET Watch:

 今回の話題は、ちょっと前から話題になっている「マストドン(Mastodon)」。高橋 暁子氏の記事を元に考えてみようと思います。

 マストドンは、ポスト・ツイッターと言われているミニブログ型のSNSサービスですが、ツイッターやフェイスブックなどと違って特定の企業が運営を独占しない、分散型のサービスという特徴があります。ドイツのEugen Rochko(オイゲン・ロッコ)氏によって昨年10月に公開されたもので、マストドン・クローンをダウンロードして自前のサーバーにインストールすれば、誰でもSNSの運営ができるのです。1つ1つのサーバーのことを「インスタンス」と呼び、企業だけでなく個人が運営するインスタンスもあります。本稿執筆時点でインスタンスは世界中で1,708もありますが、特定の企業が運営を独占していないぶん具役に言えば玉石混交で、稼働率の高いインスタンスもほとんどダウンしっぱなしのインスタンスもあるようです(Mastodon instances)。ちなみに、マストドンという名前は、約4000万年~1万1000年前にいた、ゾウやマンモスに似た大型の哺乳類の総称から来ているという話と、メタルバンド「マストドン」にインスパイアされて命名したという話があります。

 マストドンの機能面はほとんどツイッターと同様ですが、ツイート(さえずる)と呼ばずにトゥート(吠える)、リツイートと呼ぶ代わりにブーストと呼んだり、呼び方もそうですが微妙に使い勝手も違っています。例えば、公開範囲を「公開」「未公開」「非公開(フォロワーだけ)」「ダイレクト(特定ユーザーだけ)」と分けられたり、「CW(Content Warning)を使えば、常時表示と折りたたまれて表示されるコンテンツを分けることができます(この機能の画像版は「NSFW(Not Safe for Work)」と呼ばれ、職場で閲覧しているときに重宝します 〜いや、職場で見るなっていう話ですが〜)。自分がアカウントを登録しているインタンス以外のユーザーもフォローすることができる(リモートフォロー)ので、ツイッターやフェイスブックが運営企業が中央集権的にサービスを提供したりユーザー情報を集めたりするのに対して、様々な個人や企業が運営する小さなSNSの島同士がゆるく繋がったような、そんなイメージでしょうか。

 開発者のロッコ氏は、特定の企業が中央集権的にサービスを提供して、世界中のユーザーがそれに乗っかるという既存のSNSを非常に危ういと感じたのだと思います。その証拠に、ロッコ氏は以下のようにコメントしています。

フェイスブックは、人々が何かを構築するためのパワーを手にするプラットフォームではないし、決してそんなものになることもできない。フェイスブックはウィキペディアやモジラのような非営利の装いすら見せていない。この会社の主眼は、広告主の金と引き換えに、あなたのデータを解析し、広告を見せることで、あなたからできる限りのものを搾り取ることだ。フェイスブックがグローバルやソーシャルインフラになる未来は、広告とデータ処理から誰も逃れられない未来だ。

ソーシャルメディアの未来は、〝フェデレーション(連合)〟にあるべきだ。究極のパワーとは、人々が自らの空間、自らのコミュニティをつくり、うまくフィットするようにソフトウェアを修正できるようにし、なおかつ別々のコミュニティの人々が互いに交流することを妨げないことだ。もちろん、すべてのユーザーが自分のミニソーシャルネットワークを運営することに関心があるわけではない――すべての市民が、自らの小国を運営しようとは思っていないのと同じだ。だが私は、多くの国が、分離しながら共存する州によって構成されており、多くの分離しながら共存する国々がEUやNATOのような連合を形成している大きな理由が、そこにあると思っている。自治権と連携のミックス。〝フェデレーション〟だ。

 つまり、フェイスブックやツイッターは、ユーザーはその運営方針やサービスが気に入らなくても、我慢して使い続けるか退会するかの二択しかありません。マストドンのようにそれぞれのインスタンスが独立した運営方針で運営する「フェデレーション(連合)」の仕組みであれば、自らの好みに合わせたインスタンスを運営してもいいし、他の気に入ったインスタンスを選ぶこともできます。

 この状況を、社会主義と資本主義の関係や、既存巨大企業とベンチャー企業の関係のようなものになぞらえることができるのではないかと思います。SNSの世界におけるフェイスブックやツイッター、ウェブ検索の世界におけるグーグル、インターネット小売におけるアマゾンなど、特定の企業のサービスが世界を制してしまった状態はその特定企業が国と似た存在になります。具体的には、グーグルから敵視された個人のウェブサイトが検索結果から除外されることで、そのサイトを訪問するユーザーが激減したり(村八分になぞらえて「グーグル八分(はちぶ)」と言われました)、フェイスブックやツイッターの運営方針に反すると強制退会させられたりといった例があります。特定の企業がそのサービスにおける「国」の役割(もっと言えば「神」の役割といってもいいかもしれません)を担うがために、その企業のパワーが巨大で支配的になってしまいます。それはもはや「独裁国家」と呼んでもいいかもしれません。そういう中央集権的な状況に危機感を抱いた人が、かつてはOSの世界のリーナス・トーバルズ氏(Linuxの生みの親)であり、現在はSNSの世界のオイゲン・ロッコ氏かもしれません。

 もしかしたら、マストドンは巨大なSNSの支配企業に立ち向かう個人の象徴かもしれないのです。実際、既存SNS勢力を代表する著名人からは、技術的観点などにおいてマストドンに「ダメ出し」されている例もあるようで、旧勢力の保身の動きが見えることはむしろマストドンが旧SNSを脅かす存在になる可能性があるというように見ることもできるかもしれませんね。

2017年5月5日金曜日

犬やネズミも笑う? 科学者が明かす「笑い」と脳の関係 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

犬やネズミも笑う? 科学者が明かす「笑い」と脳の関係 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン):

 今回は「笑い」に関する質問に神経心理学者ファビアン・ヴァン・デン・バーグ氏が回答した内容を上田裕資氏が編集された記事を元にして、「笑い」を考えてみようと思います。その質問というのは、質問サイトQuotaに投稿された、何が面白くて何が面白くないのかを脳が判断する時どんなメカニズムが働いているのかというものです。

 ヴァン・デン・バーグ氏によれば、人間だけではなく動物も何かを面白く感じて笑うことが分かっているのだそうです。しかも、それは猿やチンパンジーなどの類人猿だけでなく、犬やネズミなど少し人間と遠い動物も笑うことが分かっているのです。つまり、「笑い」というのは高度に発達した脳を持つ動物だけに許された特権というわけではなく、脳の基本的な部分に関係しているようです。

 脳を調べてみると、ユーモアや笑いは期待や意外性に関係しているようなのです。つまり、予想外のことが起きると思わず笑ってしまうということなのです。そういう意外性によってドーパミンが放出され、紡錘形神経細胞によって楽しい感情が体全体に広がっていくという仕組みだそうです。実は、そのメカニズムの全貌は明かされていないそうで、そういう意味で質問に完全に回答はできていないのですが、笑いはコミュニケーション手段の一つで、心配なことはない、一緒に楽しもうというメッセージを伝えるのです。

 この元記事を読んでちょっと思ったのは、笑いには大きく「laugh」と「smile」の2種類があると思うのですが、前者はどちらかというと、堪えきれずにプッと吹き出してしまったり「あっはっは」と声を出す笑い、後者はカメラを向けられた時とか愛想笑いのような「にっこり」する笑いを指すのが一般的でしょう。今回の元記事は、その辺がややごちゃ混ぜのような気がしました。予想外の出来事に接して思わず笑ってしまうのは「laugh」の方でしょう。それよりもっと社会的な笑いが「smile」で、危険性がないよというメッセージを伝えるのはこの社会的な笑いだと思います。「laugh」「smile」と笑いの種類を分けるのは何も英語圏だけでもなく、日本語でも「わらふ」と「ゑむ」というように言葉を分けて表現されてきました。「laugh」の方は不随意の笑い(つまり制御不能な笑いということ)、「smile」の方は随意の笑い(意図的な笑いで制御可能)という言い方をされることもあります。人間の専売特許でなく動物たちも笑うという時の笑いは「laugh」の方なのだそうで、それに対して社会的な「smile」は人間とか類人猿のようなある程度脳の発達した動物が行うもののようです。

 思わず笑いが溢れる「laugh」・危険がなく安心できる「smile」、どちらにしても、こどもの日の今日、子供たちに笑顔が溢れていることを期待したいものですね。

スマホ触りすぎの人にこそ必要かもしれない通話機能オンリーの超小型携帯電話「The Light Phone」製品化 - GIGAZINE

スマホ触りすぎの人にこそ必要かもしれない通話機能オンリーの超小型携帯電話「The Light Phone」製品化 - GIGAZINE:

 今回は、自分もコレ欲しい!と思ったこの製品紹介の記事から。携帯電話なのですが、スマホ全盛のこの時代にあえての通話機能だけのシンプルなガラケーです(↓)。

縦85.6mm・横53.98mm・厚さ4mmとクレジットカードサイズで、重さも38.5gと軽量なので、財布や定期入れに入れてもいいかもしれないくらいです(↓)。いわゆる液晶ディスプレイはなく、電源と音量調節のボタン、Micro-USBポート、SIMカードスロットくらいしかない通話に特化した携帯電話です。

 この携帯電話を見て思い出したのは、昔ガラケー全盛時代に流行ったこの(↓)携帯電話です。auから出ていた機種で、その当時は折り畳み型が流行っていた中をあえてのストレートタイプ、ただしデザイン的には今でも通用するんじゃないのかっていうくらいオシャレだと思いませんか。この機種が流行ったのは、自分が会社に入って少しした頃なので、2000年代の前半くらい(15年くらい前?)じゃないかと記憶しています。

 そういえばスマホ市場を牽引するiPhoneの生みの親、Appleとスティーブ・ジョブズ氏のデザイン上のポリシーはシンプルさの追求だと言われています。iPhoneも取扱説明書なしで触り始められると言われていましが、最新機種のスマホは実際のところ初めてスマホを触る人には取説なしはキツいのではないでしょうか。元々シンプルを目指して製品化されても、どんどん顧客ニーズや市場での優位性を保つために機能が追加されシンプルでなくなっていくのは、仕方のないことかもしれません。そんな時、揺り戻しのようにシンプルで機能的には明らかに劣った製品が、シンプルさが薄れたことを残念に思っている一部のユーザーに支持されるのでしょうね。

2017年5月4日木曜日

AIに恋をする時代に。3割のユーザーが好意を抱いているとの調査結果が英国で発表 - Engadget 日本版

AIに恋をする時代に。3割のユーザーが好意を抱いているとの調査結果が英国で発表 - Engadget 日本版:

 今回は、人間はAIに恋をするのかというお話を、山本竜也氏の記事を元に考えてみようかと思います。人間がAIを搭載したロボットに恋をするというのは、SFではありがちの設定ではありますが、あながち空想の世界のことではなく現実に起きる可能性も随分高くなっているようなのです。

 最近はAppleのSiriやAmazonのAlexaなど、音声AIアシスタントと呼べそうなAIがどんどん出てきています。広告代理店のJ. Walter Thomsonと市場調査会社のMindshareが、そんな音声AIアシスタントに関して、ユーザーの3割以上が相手が人間であってほしいと願う程に好意を抱いているというのです。調査サンプルはイギリスの102人と少なめで、男女比や年齢構成も分かりません。したがって、統計学的には必ずしも結論が出せないと思いますが、それでも単純なヒアリングだけではなく脳電位を測定して感情を読み取って客観性を加えています。実験対象の音声AIアシスタントはAmazonのAlexaで、画面上の文字列とAlexa音声では、Alexaの方が脳への負担が少ないという結果が出ました(↓)。

 そして、音声AIアシスタントの使い始めはやはり機械の無機質さを感じるようなのですが、使い込んでいくとAI側もユーザーの声や話し方などを学習して最適化が進むからなのか、7割もの人が実際の人とコミュニケーションをしているように感じると答えています。もっと興味深いのは、26%とその割合は多くはありませんが、音声AIアシスタントに対して性的な幻想を抱いているという結果も出たのだそうです。つまりは、音声AIアシスタントを単なる機械と捉えているのではなく、擬人化して捉えている証拠と言えるのではないかと思います。

 擬人化という言い方をしましたが、例えば四足歩行のロボットを足で蹴飛ばしても倒れないことを表現した動画(↓)が公開された時、一部の人から「かわいそうだ」というクレームが出たのだそうです。しかも牛くらいのサイズのロボットの時はそんなクレームが出なかったのに、犬くらいのサイズのロボットになった途端にクレームが増えたのだとか。冷静に考えてみれば、ロボットに感情があるわけでもないので、人間が足で蹴っても道徳的・倫理的なクレームが出るのはおかしいと思いますが、それでも人間はロボットを動物のように感じてしまう特性があるようなのです。

 音声AIアシスタントについても、現在は姿かたちこそ人間っぽさや動物っぽさがありませんが、人間がより親近感を感じるためには、ヒューマノイド型のロボットにする方がいいかもしれません。逆に災害現場や火災現場など、過酷な状況で働くロボットは人の同情をかわないように、わざと人間や動物に見えないような形状にすることが必要かもしれませんね。

2017年5月3日水曜日

わざわざ割ったセンベイを安く売る煎餅屋の儲けが減らなかった訳 - まぐまぐニュース!

わざわざ割ったセンベイを安く売る煎餅屋の儲けが減らなかった訳 - まぐまぐニュース!:

 今回の話題は「訳あり商品」。佐藤きよあき氏が紹介されている、訳あり商品を逆手に取ったある個人商店の記事を元にしています。

 訳あり商品とは、型落ち品・新古品・展示品処分・傷物・不揃いサイズなどのために、通常の販売ルートで流通されないものの、見た目だけの問題などで機能的には問題がない商品のことをさすのが一般的です。食品の分野で多く見られ、古くはパンの耳や魚の切り出し品など、最近ではビスケットの割れ物や煎餅・あられの「久助」など、生産者にとっては廃棄コストを削減でき、消費者にとっては安く手に入れられ、Win-Winが築けます。

 佐藤しが紹介されているのは、そんな訳あり商品で大人気の煎餅屋さんです。割れてしまった煎餅を袋詰めして安く売り出したところ、すぐに売り切れてしまいお客さんから残念がる声を多く聞いたのだそうです。その後も、出すたびにすぐ売れ切れるので、店主は逆転の発想で、わざと割った煎餅を安く売るようにしたのだそうです。せっかく定価で売れる、割れていない煎餅をわざと割って「訳あり品」にするというのですから、利益が得られないんじゃないかと心配になりますが、実際には利益が下がることはありませんでした。確かに自宅用の煎餅を買うお客さんは訳あり品を買うのですが、安い訳あり品を試して見て美味しさに気づいてもらい、贈答用の正規品もこの煎餅屋さんで買ってくれるようになったのだそうです。つまり、ただの処分品ではなく集客の目玉として「訳あり商品」を位置付けたのです。

 自分が勤めている会社では、あるお客さんに様々なシステムを売ろうとする場合、最初は比較的安くて導入に抵抗の少ないシステムを導入してもらい、そこを起点にもう少し高いシステムやお客さんと二人三脚で進めるようなプロジェクトで囲い込みを図るというやり方をするのですが、その最初のシステムを「ドア・オープナー」と呼んでいます。あまり一般的なマーケティングの用語ではないのかもしれませんが、セールスマンが訪問したお客さんに扉を開けてもらうイメージで、たとえ取引がなかったお客さんでも安い値段で効果の大きなシステムをきっかけに、その後の囲い込みに繋げるのです。この煎餅屋さんでは、ドア・オープナーの役割を「訳あり商品」に担わせ、そして訳あり商品も薄利多売ながらも収益の柱になりつつあるのだそうです。

 この煎餅屋さんの場合、単純に正規品の煎餅の値段を下げるというのは下策だったと思います。正規品を期間限定で特売するというのもおそらく下策で、消費者は次の特売を待つだけでやがては常に特売を余儀なくされるでしょう。そこで、それまでの正規の煎餅を高い値段で維持したまま、材料や美味しさのランクを下げた安い商品と2つのラインナップにすることも考えられたでしょうが、これは中策でしょう。安い商品はあくまでも美味しさで正規品に劣るので、安い商品を買ったお客さんが将来の正規品のお客さんになってくれる可能性が低いからです。そこで、この煎餅屋さんのように、正規品と訳あり品のラインナップが上策なのです。消費者は訳もなく安い商品は警戒し、特に食品の場合は同じ商品であっても値段を安くすれば、「安かろう悪かろう」という心理が働いて美味しさが下がったように感じます。それは正規の煎餅の値段を下げるのが下策の理由でもあります。訳あり品は、なぜ安い値段なのかが明白ですので、消費者としては美味しさが下がると感じることはありません。味は正規品と同じなのですから、訳あり品を買ったお客さんがその味を気に入ってくれれば次の贈答用の時に正規品を買ってくれる可能性もずっと上がります。

 訳あり商品をドア・オープナーに位置付けるというのはこれまでもありましたが、わざと訳ありにしてしまうというのは「コロンブスの卵」的発想かもしれませんね。

2017年5月2日火曜日

中高生が思い描く将来についての意識調査2017

中高生が思い描く将来についての意識調査2017:

 今回の元記事は、ソニー生命保険株式会社が2017年3月21日~3月27日の1週間で調査した「中高生が思い描く将来についての意識調査」のアンケート調査結果です。サンプル数は中学生200人と高校生800人の合計1,000人です。

 最初のアンケートは、4月からの新生活に明るい見通しをもっているか、不安を抱いているかという質問です。中学生男女と高校生男子は約6割が希望を持ってワクワクしていますが、高校生女子のみその割合は約半数に止まっており、最近はSNSを含めた人間関係が難しいと言われているので、その辺りの不安感があるのかもしれません。

 次は、自身の将来(1年後・3年後・10年後)について、明るい見通しをもっているか、不安を抱いているかという質問。1年後・3年後・10年後と先へ行くに従って、予想がしづらくなって明るい見通しの割合が減ってきます。そして、中学生よりも高校生の方が明るい見通しの割合は少なく、大人に近くに従って進路問題が現実的な人生設計にリンクしてきて不安が増してくるのかもしれません。

 次は自分のではなく日本や世界全体の10年後に対して、どのような見通しをもっているか。中学生・高校生とも、3-4割の生徒が明るい見通しと答えたのに対して、不安を持っていると答えた生徒が6-7割と、不安感の方が大きいという結果になりました。不安感は高校生の方がやや高く、高校生くらいになれば、混沌とした世界情勢や北朝鮮問題など自分の将来にも影響を与えてくる可能性がある問題を直視する傾向があるのかもしれませんね。

 次に、自分の10年後を具体的に考えているか聞いたところ、ちょっと面白い結果になっています。中学生は「具体的に考えている」「具体的ではないが考えたことがある」の合計が87%だったのに対して、高校生は80.4%となっており、むしろ中学生の方が自分の10年後を考えている割合が高いという結果です。さらに男女別では、中学生・高校生とも男子生徒よりも女子生徒の方が考えたことがある割合が高く、中高生ぐらいの時は女の子の方が精神的に大人なのかもしれませんね。2011年に中学生を対象にした将来に関するアンケート調査と比べてみると、自分の10年後の将来を考えている割合は77.6%→87.0%と上昇しており、2011年に中学生ということは「ゆとり教育世代」と呼ばれた世代でもありますので、現在の中高生は「ゆとり」からの揺り戻しで、よりしっかり自分を見つめているのかもしれません。

続いて、「大人」に対してどのようなイメージをもっているのかという質問。「大変そう」「疲れている」などネガティブイメージが「元気」「楽しそう」などのポジティブイメージを大きく上回っています。なおかつ残念なことに、2011年調査の結果と比較をすると大きく上昇しており、元気な大人の姿を見せられていない寂しい現状が見て取れますね。


では、どのようになれば「自立した大人」といえると思うかという質問には、中学生・高校生ともに「働き始めたら」が最も多く、次いで「一人暮らしを始めたら」や「こづかいや仕送りを貰わなくなったら」と続いています。経済的な自立が大人のイメージということのようです。

 どのような大人をカッコいいと思うかという質問に対しては、中学生では「好きなことに打ち込んでいる」「マナーがしっかりしている」「身近な人々(家族や仲間)を大事にしている」と続き、高校生では「マナーがしっかりしている」が最も多くて次いで「好きなことに打ち込んでいる」「身近な人々(家族や仲間)を大事にしている」と続きました。男女別にみると、「好きなことに打ち込んでいる」や「マナーがしっかりしている」「身近な人々(家族や仲間)を大事にしている」は女子のほうが高く、恋愛対象の年上の男性をイメージしているかのようにも感じます。

 中高生の将来の夢を聞いたところ、中学生・高校生とも「安定した毎日を送る」が最も多く、次いで「好きなことを仕事にする」「あたたかい家庭を築く」と続きました。大人の立場から想像するような「お金持ちになる」は中高生とも6位止まり。大きな成功をおさめるより、安定した収入を得て温かい家庭を築きたいという安定志向が見て取れます。男女別では、「素敵な相手と恋愛・結婚する」は女子のほうが高く、中高生とも男子より20%以上高い数字になっています。

 中学生・高校生の将来なりたい職業については、男子は「ITエンジニア・プログラマー」「ゲームクリエイター」「ものづくりエンジニア」といったコンピューター系・メーカー系が多く、最近よく言われている「YouTuberなどの動画投稿者」は中学生では3位に入りました。高校生になると現実路線にシフトチェンジするのか、YouTuberは10位まで下がります。自分が子供の頃人気が高かった「プロスポーツ選手」はそれぞれ4位・9位と、やはり高校生になって現実が見えてくるようにも思えます。一方で女子の方は、中学生では1位「歌手・俳優・声優などの芸能人」、2位「絵を描く職業(漫画家・イラストレーター・アニメーター)」、3位「医師」(13.0%)と比較的夢を見ている部分も見えますが、高校生になれば歌手・俳優・声優などの芸能人」は3位に、「絵を描く職業」は5位にそれぞれ後退し、代わって1位「公務員」2位「看護師」と現実路線の中でも堅実志向にシフトしています。

 では自分の夢に向けた準備をしているのかという部分では、7割を超える中高生が自分の夢のために、今何をすべきか考えたり意見交換をしたり叶える方法を調べているようです。

 最後に「中高生のいま」として、スマホやSNS、お金、恋愛といった質問をしたところ、「自分専用のスマホを持っている」「コミュニケーション手段にLINEなどのSNSを使っている」のは中高生とも9割前後で、スマホでLINEというイマドキのステレオタイプのイメージもあながち嘘ではないという結果が得られています。お金については、自分の使ったお金を記録している中高生は多くありませんが、親とお金についての話をしている中高生は半数程度いるようです。恋愛に関してはちょっと不思議な結果ですが、「いま好きな人がいる」のは中学生(48.0%)の方が高校生(42.8%)よりも多く、半分以上が好きな人がいないというのは、将来が心配な気もします。

 大人になって20年以上にもなる自分からすれば、身近な中学生・高校生は甥っ子や姪っ子くらいしかいませんが、世間一般で言われている中学生像・高校生像とそれほどかけ離れない結果だったように思います。男子生徒は、昔のように「大金持ちになる」とか「政治家になる」なんて大それたことを言わず、コンピューター系の仕事が人気上位に上がってくるなど、現代がそれだけコンピューターが身近になったんだと感じます。一方で女子生徒の場合は、中学生で芸能人が1位になるなど根強い人気で、AKBをはじめとしたアイドルが身近な存在になったことで敷居が低く見えているのかなとも思います。皆さんの実感する中学生像・高校生像とアンケート結果はどのくらいリンクしたでしょうか。

2017年5月1日月曜日

人工知能の「教師なし学習」がついに実現する? グーグルによる「AI対AIの訓練」という挑戦|WIRED.jp

人工知能の「教師なし学習」がついに実現する? グーグルによる「AI対AIの訓練」という挑戦|WIRED.jp:

 今回の話題はこの山ちゃんウェブログでよく取り上げる人工知能(AI)に関するものですが、Cade Metz氏による記事を元に「教師なし学習」の最先端について考えてみようと思います。

 現在のAIブームを支えている主な技術は、人間の神経細胞(ニューロン)を模したニューラルネットワークの階層を深くしたディープラーニングです。ニューラルネットワークもディープラーニングも、数多くのパラメータを膨大なデータを元に調整して行く手法です。多くのデータから機械的にパラメータを同定する過程は「機械学習」という言い方もされます。ごくごく簡単に言えば、
  y = ax + b
という関数でx, yの具体的なデータ(例えば、(x, y)=(1, 5), (2, 8))を元にパラメータa, bを同定(a=3, 2)するのと同じことをやっているのです(パラメータa, bが同定されれば、全く新しい入力 x=3 に対しても出力 y を計算することができます)。もちろん実際のディープラーニングでは、同定しなければならないパラメータは膨大でそのために使用されるデータも膨大なのですが、そのエッセンスは一次関数のパラメータを決めるのと大差ないのです。

 こういったデータからパラメータを同定する手法は「データが命」です。データ中心主義と言ってもいいかもしれません。パラメータを同定する時に使用される具体的なデータを、パラメータを同定するための学習の「教師」という意味で「教師データ」と言います。つまり、教師データの良し悪しがそのニューラルネットワークの学習のキモになっているのです。

 ところが、今回の元記事で言われているのは、そんなキモとなる教師データなしで学習することができる可能性があるアイデアなのです。GoogleのAI研究所「グーグル・ブレイン」に属するイアン・グッドフェロー氏は、2014年、モントリオール大学の博士課程在籍中、バーで少し酔って議論をしたあと「ジェネラティヴ・アドヴァーサリアル・ネットワーク」(GANs)と呼ばれるAI技術を思いついたのです。このアイデアは、酔いの中で生まれたものですが、素晴らしくエレガントです。例えば、あるAIがリアルな画像を作り出します。そしてもう一つのAIが、その結果を分析して画像が本物か偽物かを判断しようとする。グッドフェロー氏の言によれば「アーティストと美術評論家の関係」のようだというのです。つまり、アーティスト役AIは本物だと思わせる画像を作り出して美術評論家を欺こうとするのです。評論家役AIは、その画像を偽物と識別しようとします。この「対決」の過程で、アーティスト役AIが単独でできなかったやり方で本物の画像を真似る方法を学んでいくのです。ちなみに、グッドフェロー氏は、このアイデアを思いついたバーで友人と議論した後、自宅に帰ってそのままノートPCを開いてGANsのプログラムを書き上げたのだそうで、なんとも偉人らしいエピソードですね。

 しかし実際のところ、まだまだGANsを使いこなすのは難しいのが実情です。ただでさえAIの訓練は難しいのに、アーティスト役と評論家役の2つのAIを同時に訓練して「切磋琢磨」させていかなければならないのですから。しかしうまくGANsを使いこなすことができれば、現在はまだ実現されていない「教師なしの学習」が可能なるかもしれないのです。

 ニューラルネットワークの学習が難しいのは、教師データを準備することの難しさがそのほとんどなのです。例えば、教師データとして数百万の猫の写真を学習させることで、ニューラルネットワークに猫を認識させられるようになりますが、その過程で人間が膨大な猫の写真を分類しなければならないのです。つまり、AIを使って人間の労力を肩代わりさせようとすれば、そのAIのために人間が膨大な労力を費やさなければならないというパ に陥ってしまうのです。AIを鍛えるために人間の多大な労力が必要になること、そしてどんな写真を教師データとして採用するかはその人次第なので写真にバイアスがかかるという2つが現在の機械学習を元にしたAIの大きな問題点なのです。

 したがって、もし「教師なし学習」が実現されれば、人間は教師データの準備という気の遠くなる作業から解放され、そのことでAIの発展が加速度的に進むことが予想されるのです。夢の「教師なし学習」を実現するためのアイデア「GANs」が、2つのAIがライバルとして切磋琢磨することで学習を進めていくという極めて「人間的」な発想だということも、とても面白いと思いませんか。