2017年5月28日日曜日

始まりは道端で漏らした“うんこ”――「排泄ビッグデータ」が介護現場に変革をもたらす(前編) | 常識を越えろ! 変革者たちの挑戦 | nikkei BPnet 〈日経BPネット〉:日経BPオールジャンルまとめ読みサイト

始まりは道端で漏らした“うんこ”――「排泄ビッグデータ」が介護現場に変革をもたらす(前編) | 常識を越えろ! 変革者たちの挑戦 | nikkei BPnet 〈日経BPネット〉:日経BPオールジャンルまとめ読みサイト:

 今回は山田久美氏の刺激的なタイトルの記事を元に、変革者の挑戦についてご紹介したいと思います。その変革者とは、トリプル・ダブリュー・ジャパンの中西敦士代表取締役です。トリプル・ダブリュー・ジャパンは、2015年2月創設のベンチャー企業で、同社が開発した「DFree」というウェアラブル装置(↓)が注目を浴びています。「DFree」は、下腹部に装着することで膀胱や直腸の状態をセンシングして、排泄のタイミングをスマートフォンなどに知らせてくれるのです。簡単に言えば、いつウンコやオシッコが出るかを予測して教えてくれるもので、DFreeの「D」はおむつを意味するDiaperの頭文字です。

 DFreeの使いどころとして、最もターゲットになるのは「介護現場」です。介護現場では、たとえ自力でトイレに行ける人でも、転倒リスクがあるために必ず介護職員が付き添います。また入所者がコミュニケーション可能でも、お年寄りの場合は尿意や便意の感じ方が鈍くなる傾向があり、入所者ご本人がまだ大丈夫と言われても実際には排泄タイミングが迫っている場合もあります。したがって多くの介護施設では、時間を決めて定期的にトイレに連れていくということをしますが、実際のところ「空振り」に終わることも多く、出るか出ないかわからないのにトイレに連れて行くというのは職員の大きな負担にもなっています。人手不足の介護施設では、負担を減らすためオムツを使用することになり、それが入所者の寝たきりを助長したり、認知症の悪化やQOL(=Quality of life:生活の質)低下につながります。入所者をオムツから解放してあげられれば、入所者ご本人の尊厳を守るという上で大きいのはもとより、介護現場で働く職員にとっても大きな負担軽減につながります。

 原理的には、DFreeは尿意や便意を検出しているのではなく、膀胱や直腸にどれだけ尿や便が溜まっているかという「客観的な事実」ととらえています。認知症や脊髄損傷の方の場合など、尿意や便意を感じることができない人も多くいて、そういう方々に使ってもらうための製品だからです。そして、介護職員のスマートフォンに入所者の膀胱にどれだけ尿が溜まっているか、直腸にどれだけ便が溜まっているかをグラフ表示するのです(↓)。この客観的な観測結果を元にして入所者をトイレに連れて行けば、オムツがなくてもベッドを汚すことがなく、職員の負担もグッと減るのです。


 記事の後編では、中西氏がこの製品を思いついた意外なきっかけが述べられています。実はDFreeは介護現場をターゲットに開発されたものではなく、むしろ開発の中で知った大きな潜在市場だったというのです。ではもともとの開発のきっかけとは何だったのかというと、それはこの記事にもなっている意外なアクシデントだったのです。中西氏の言によれば「すべての始まりは2013年9月のある日、自分が留学先の米国カリフォルニア州バークレーの道端でうんこを漏らしたことにあります」とのこと。「また漏らしてしまうのではないか」という不安で、しばらくは外出できないほどだった中西氏。「二度と漏らさないためにはどうすればよいか」を考え抜いた結果「排泄のタイミングを予知できるようにする」という結論にたどり着いたのです。何かとタブー視されがちな「排泄」に着目して起業した中西氏。現在はニッチな市場かもしれませんが、これからますます高齢化社会担って行くことを考えると、未来は相当明るいんじゃないでしょうか。

 最後に少し技術的な部分も。トリプル・ダブリュー・ジャパンは、IoTやビッグデータ・AIといった最近の流れにも乗ろうとしています。DFreeによって収集されたここのユーザーのデータを「排泄ビッグデータ」として収集し、ユーザーの膀胱や直腸の容量と排泄までの時間などを、人工知能(AI)などで学習させます。それによって、より精度の高い予測を可能にしていこうというのです。センシングによって収集されたビッグデータを、AIで解析して排泄予測にフィードバックするという、IoTのループともいうべき黄金律を狙っているのです。なにせ、これまでは排泄データを集めようとした人なんていなかったわけですから、いざ集まったデータには相当の価値があるんじゃないかと思います。例えば介護だけでなく医療分野の研究にも活かせそうですし、AIによる解析で思わぬものとの関連が見出されるかもしれません。現在すでにそうなりつつありますが、次の時代はデータを持っていることは企業の大きな強みになる、そんな時代なのですから。

2017年5月27日土曜日

「パスワードは定期的に変更してはいけない」--米政府 (ニューズウィーク日本版) - Yahoo!ニュース

「パスワードは定期的に変更してはいけない」--米政府 (ニューズウィーク日本版) - Yahoo!ニュース:

 今回はニューズウィーク日本版の記事を元に、パスワードの定期変更について考えてみようと思います。実は以前にもこの山ちゃんウェブログで「パスワードの定期変更に意味はあるのか」という記事を書きましたが、その時は定期変更すべきかどうかとう結論までは至っていなかったので、自分にとってもリベンジという感じです。

 元記事で言われているのは、これまでアメリカの国立標準技術研究所(NIST)が発行する「電子認証に関するガイドライン」では定期的にパスワードを変更することが書かれていたのですが、新版からはこのルールを変更して、パスワードを定期的に変更することをユーザーに求めるのはやめるということです。

 実は自分の会社でも、会社支給のパソコンのログインも社内システムへのアクセスもユーザーIDとパスワードの認証を求められ、パスワードは半年に1回は変更を求められます。それも使用する社内システムごとに異なるID・パスワードですから、結構ひんぱんに画面に「パスワードが長期間変更されていません」なんて出て、その都度新しいパスワードを設定するのです。

 実際ほとんどのユーザーが気づいていることですが、定期的に変更しなければならないパスワードがいくつもあった場合、それまでのパスワードの末尾の番号を順番に増やしていくとか末尾のアルファベットをa, b, c, ...と順番に変えるだけとか、全く新たなパスワードを作るのではなく、ユーザーはそれまでのパスワード容易に想像がつくパスワードに変更するだけなのです。だってそうでしょう、最近はアルファベットだけとか数字だけのパスワードはダメとか、意味のある単語はダメとか、8文字以上でなきゃダメなんていう制限もあるので、システムごとに定期的に新しいランダムな文字列を作り出してそれを覚えておけというのは、人間の能には相当に酷なことです。しかも、たとえユーザーが神業に見える定期パスワード変更(新たなランダム文字列を都度作り出してそれをシステムごとに暗記しておく)ができたとしても、実際のところハッカーにとってはパスワードのクラック難易度はそれほど変わらないのです。パスワードの定期変更は、ハッカーに対するよりもむしろユーザーに対して不便を強いることになるのです。

 よくキャッシュカードの暗証番号に誕生日を使うなと言いますが、コンピューターシステムのパスワードとキャッシュカードの暗証番号は、一見似ているものの実は全然レベルの違うものです。キャッシュカードの場合、カードそのもの認証の一部を担います。たとえ暗証番号がバレても、基本的にはそのカードを持っていなければ役に立たないので、カードという物理要素と暗証番号というサイバー要素の組み合わせで認証をしていると言えます。一方でコンピューターシステムのユーザーID・パスワードの組み合わせは、サイバー要素のみで認証するわけですから、サイバー要素がバレることがそのままクラッキング被害につながるという点で脆弱です。パスワードとその定期更新という観点ではさらに悪いことに、サイバー要素のみのクラッキングにはほぼ100%コンピューターが使用されることです。コンピューターにとって、現時点での任意の8文字を見つけ出すことは、それが定期的に変更された結果なのかどうかは全く関係ありません。定期的な変更が有効なのはコンピューターがその8文字を見つけ出すより先にユーザーがパスワードを変更してしまうことですが、イマドキのコンピューターは高速なので、実際には1日1回とか1時間に1回とかの頻度で変更でもしない限りは効果が期待できないでしょう。

 じゃあ一体どうすればいいのでしょう。1つはICカードのような物理要素、あるいは指紋や静脈などの生体要素を組み合わせることです。複数の要素を組み合わせるというのは、セキュリティ上もかなり有効です。ネット上のサービスなどで、物理要素や生体要素と組み合わせるのが難しい場合、「パス『ワード』」の代わりに「パス『フレーズ』」を使うという手があります。パスワードがせいぜい8文字とか16文字程度のランダムな文字列なのに対して、パスフレーズは64文字以上の文章(フレーズ)です。実際、NISTでもパスフレーズを推奨していて、フレーズであれば長くても覚えられますし、文字列が長いことでクラッキングも困難になります。意外に知られていませんが、WindowsではすでにWindows2000以降のOSではパスワードとして127文字まで使用でき、句読点と特殊文字だけでなく日本語も可能です。

 前回は出なかった結論について、今回は「パスワードの定期変更はしない」ことが正解、そして「8文字や16文字程度のパスワードよりも、長いパスフレーズを使う方がよい」と結論づけておこうと思います。

2017年5月26日金曜日

さすがは東大生!?東大の学園祭であの「逃げ恥」をパロったお店の名前が秀逸すぎて大人気に|@Heaaart - アットハート

さすがは東大生!?東大の学園祭であの「逃げ恥」をパロったお店の名前が秀逸すぎて大人気に|@Heaaart - アットハート:

 今回は軽い話題ですが、東大で5月20・21日に本郷・弥生キャンパスで行われた学園祭「五月祭」で、なかなか秀逸なお店があったというので、ご紹介したいと思います。昨年流行った「逃げるは恥だが役に立つ」のパロディということで、そのお店がこちら(↓)。


 世間的に忘れた頃にやってくるパロディですが、本家「逃げ恥」の原作者・海野なつみ氏もご自身のTwitterで
  クオリティ!!!
とツイートするなどこの牛串屋さんは大人気で、商品の方も無事完売したそうです。

2017年5月25日木曜日

「イカの締め方」動画に虐待指摘 「命を頂いて生きる」と省みる声   – しらべぇ | 気になるアレを大調査ニュース!

「イカの締め方」動画に虐待指摘 「命を頂いて生きる」と省みる声   – しらべぇ | 気になるアレを大調査ニュース!:

 今回はしらべぇ編集部・もやこ氏の記事を元に、最近多いナナメ上の批判について考えてみたいと思います。元記事で紹介されているのは、釣ったイカを締める様子を撮影した動画をTwitterに投稿した学生に、想定外の反応が多かったという記事です。

 イカの締め方を投稿したのは、「水族館の飼育員」を目指して勉強に励む男子学生だそうです。釣りをする人達の参考になればと、手際よく締める様子を撮影してTwitterに投稿したのです。

 ところが、他のユーザーからは予想だにしない反応が返ってきます。実際の反応の一部がこちら(↓)。

・かわいそう…
・なんか、イカの拷問みたいだ
・イカの気持ちになってください
・あなたは人間もしめるつもりですか?動物も人間と同じ命。なんで人間のために苦しめなければいけないのかよく考えてツイートしてください
・うん、わーすごい技術!犬殺して動画あげてるのと変わらない気がするんですけど

 もしかしたらあなたは、ネット上でのこのナナメ上の批判を、取り上げるに値しないと思うかもしれません。この批判をしている人は肉や魚を食べないのだろうか、百歩譲ってベジタリアンだったとしても植物にも生命があるので、それを奪っていることには変わりないのだが、とか。人間は他の生命を殺してこれを食べることでしか生きられない、そういう意味で動物・植物の生命を奪う「食事」という行為は極めて罪深い行為です。他の「生命を頂いて生きる」のが人間なのだから、頂いた生命の分も一生懸命に生きなければならないのはもとよりでしょう。そういう意味で、スポーツフィッシングのような魚の生命を弄ぶスポーツに眉をひそめる人がいるのも頷けます。

 ところで、仏教の世界には「不殺生戒(ふせっしょうかい)」という戒めがあります。要するに「生命(いのち)ある生きものを殺すな」ということで、これを文字通りに受け取るなら、イカの締め方を投稿した学生さんは、少なくとも宗教的には批判されても致し方ないかもしれません。ところが実際はどんな高僧でも食事は摂るわけで、お米・野菜・肉・魚など、人間が生きるために食べるものはすべて生命あるものです。したがって、食事とは他の生命を自分の生命に変える行為と言えるでしょう。イカの締め方の投稿に批判を浴びせるユーザーは、無意識に根付いている「不殺生戒」を根拠にした反応を示しているのかもしれませんが、彼ら自身も不殺生戒を破っていることは明白で、むしろ人間は不殺生戒を破らざるを得ないことを懺悔すべきです。食事の挨拶「いただきます」には「あなた方の尊い生命をいただいて、精いっぱい活かせていただきます」という意味に解釈するべきでしょう。

 そして面白いことに、キリスト教では殺生に対して「罪」とは考えないと言われています。それは旧約聖書の創世記に次のように書かれていることからもわかります。

神は彼らを祝福して言った。
『産めよ、増えよ、地に満ちて地を従わせよ。
 海の魚、空の鳥、地の上を這う生き物をすべて支配せよ。』

キリスト教では、動物は人間に食べられるために神が用意したもの、という考え方をします。この世の万物の創造主がそう決めたのですから、動物を殺してその肉を人間が食べることはなんら問題がありません。一方で動物が人間に刃向かうことは、神に対する冒涜となるのです。ヨーロッパでは、たまに教会のお隣が屠殺場という場合がありますが、キリスト教の場合は何も問題がないわけです。そして、キリスト教の人であれば、今回のイカを締める動画は何も問題なかったのでしょうね。

 そう言えば、今回の元記事で言われているイカを締める動画に「かわいそう」との批判が出たという話で、以前四足歩行のロボットを蹴飛ばす動画も「かわいそう」との批判が出たという記事を書いたことを思い出しました。その時は、見た目が人間に近かったり、普段可愛がっているペットに近いというだけで、人間がロボットに感情移入してしまうのが面白いと思いましたが、今回のイカはちょっと見た目で感情移入というのではなさそうですね。それとも、最近は若い女の子がグロテスクなものも「かわいー」と言ったりしているので、人間の美醜判断の基準が変わってきたのかもしれませんが。

2017年5月24日水曜日

鍵はカルシウム断ち。卵子に入れない精子にする「分子コンドーム」|ギズモード・ジャパン

鍵はカルシウム断ち。卵子に入れない精子にする「分子コンドーム」|ギズモード・ジャパン:

 今回の話題は「避妊」。分子細胞生物学のPolina Lishko助教授が率いるチームが、従来とは違う全く新しい避妊方法を見つけたという面白い記事を見つけたので、ご紹介したいと思います。

 そもそも避妊とは、受精もしくは受精卵の着床を妨げて妊娠を避けることの総称です。いくつもの方法があり、一番有名どころとしてはコンドームという避妊具を使う方法でしょう。他にも避妊用ピルのような薬品を使用する方法、確実性に疑問はあるもののオギノ式や基礎体温法、不妊手術のような外科手術によるものもあります。今回の避妊方法はは、Polina Lishko助教授が「分子コンドーム」と名付けていますが決して物理的な避妊具によるものではなく、薬品によって精子が卵子に入ることを妨げる方法なので、ピルなどと似た方法です。しかし、ピルのような副作用がないことこそ、この方法の優れているところです。

 元記事では、妊娠のメカニズムとその中で「分子コンドーム」がどう作用するかを詳しく説明されています。精子は自らの身長の24,000倍もの距離(これは175cmの身長の人間に置き換えれば42km、マラソン相当ということですね)を泳いで、卵子に到達するとドリルのように回転して侵入します。このドリルのような回転を駆動するのが、実はカルシウムなのです。「分子コンドーム」は、じゃあ燃料のカルシウムを発ってしまえれば卵子にタッチダウンできないんじゃないかという発想なのです。そして、カリフォルニア大学バークレー校・Polina Lishko助教授は古今東西の男性避妊の薬効の聞こえ高い生薬を調べ回り、ついにそのカルシウム噴射の元を断つ成分に辿り着いたのです。しかも2つ。


 1つ目は「ライコウトウ(別名トリプテリジウム・ウィルフォルディ)」から抽出される「プリスチメリン(pristimerin)」という成分。関節リウマチに効くとされており、漢方の世界ではすでに精子に作用して生殖機能を低下させると言われていました。もう1つは、マンゴー、アロエ、たんぽぽの根やぶどうに含まれる「ルペオール(lupeol)」。抗がん薬として臨床実験が行なわれたりしています。

 コンドームは今やコンビニでも気軽に買える避妊具ですが、ちょうどのサイズを使用しないと、行為中に外れてしまって避妊に失敗するケースもあると言います。ピルは、医療機関を受診して入手しなければならないのでハードルが高いばかりか、女性の大敵である体重増加や偏頭痛・吐き気・イライラなど副作用が言われています。そんな一長一短の避妊において、今回の「分子コンドーム」はまだ入手のしやすさがどの程度になるか分かりませんが、少なくとも副作用がないことと原理的にかなり避妊の確実性が高いだろうところが期待を持てる技術ですね。

2017年5月23日火曜日

「お金があれば公立中は避けるべき」は真実か? | 公立校で伸びる子は親が違う | 日経DUAL

「お金があれば公立中は避けるべき」は真実か? | 公立校で伸びる子は親が違う | 日経DUAL:

 今回の話題は、ズバリ公立中学校と私立中学校。元にしている記事は、教育環境設定コンサルタントという肩書を持つ松永暢史氏の連載記事2回目です。いわゆる受験のプロが語る中学受験の話は、小学生の子供を持つ自分も連載1回目から目が離せません。

 実は以前にも同じようなテーマで書いたことがあり、遠い昔のことではありますが自分も中学受験をして私立通学に通った経験を思い出し、私立に通うには子供自身に「折れない心」が必要だと考えました。正直なところ、自分も親になってみて、私立中学の魅力は捨てがたいものがあります。中学3年間ではなく中高6年間で計画された学習、設備の整った校舎、レベルの高い教師陣、そして何よりもレベルの高い(意識の高い)友人が周りにいること。中高一貫の私立校に通った身からすると、これらのお題目が全て当てはまるかどうかは微妙な気もしますが、実体験として公立中学校との比較はできていないので、概ねそうだったと言えると思います。

 それに対して、公立中学校はどうでしょうか。まず私立との大きな違いは「多様性」でしょう。将来東大を目指すような子も、掛け算九九もままならない子も同じ教室に詰め込まれるわけですから、社会の格差がそのままクラスに持ち込まれるでしょう。授業がターゲットとする子供のレベルは中の下といったところでしょうから、レベルの高い子は安心してしまって勉強する気が失われ、レベルの低い子は置いてけぼりを食ってしまうことになりがちです。したがって、多様性のある子供たちをクラスとしてまとめ上げる教師には、相当な力量が求められます。イマドキ体罰はできませんから、多種多様なレベルの子供たちに同じ方向を向かせるための武器は「内申書」しか残されていません。つまり、公立中学校の教師は、言うことを聞かない子には「内申点が下がるよ」と言って言うことを聞かせるなど、この唯一にして最大の武器を上手に駆使して、多様な子供たちをまとめ上げるという仕事をしているというわけです。

 こう聞くと、テストの点数よりも内申点が重視される公立中学は不公平だと思うかもしれませんが、この「内申点」の仕組みがうまくハマる子にとっては快適な環境です。そもそも公教育というのは、国家公務員など国や地方自治体、日本のために役立つ企業を支える人材を育てるのが最大の目的です。そして、公務員や企業を支える人材とは、突飛な発想をしたり授業をろくに聞きもしないのにテスト本番だけ満点取るような天才肌ではなく、宿題をきちんとしてルールや提出期限を守る真面目な人、つまりは「内申点」が取れる人というわけです。したがって、真面目で慎重で人当たりもよく、将来的に公務員や教員、企業で働きたい子にとっては、公立中学校は非常に向いているのです。

 もう一つ、タイプ的に公立中学がハマるのは、将来ベンチャー企業を立ち上げるような起業家タイプの子です。なんせ公立中学は社会格差の縮図です。お金持ちのボンボンがいるかと思えば、明日の食べ物に困る子もいるでしょう。大人になってしまうと自分の属するクラスと違うクラスの人と触れ合うチャンスなどそうそうありませんが、公立中学ではそれが可能なのです。そういう多様な友達と触れ合うことで、様々なニッチな商品やサービスのタネを思いつくこともあり、同質性の中で育つ私立中学よりもいい意味で「鍛えられる」のも公立中学のメリットです。

 つまり、子供にいわゆるエリート階層を目指させるなら、私立中学に通うのがいいでしょう。公立中学は公務員や優秀な労働者といった社会を支える階層になることが多いですが、一方で将来ベンチャー企業を立ち上げて大儲けする子のも公立中学で育ちやすいというのだから、面白いですね。

2017年5月22日月曜日

たった7文字でスムーズに交渉の主導権が握れる、魔法の言葉 - まぐまぐニュース!

たった7文字でスムーズに交渉の主導権が握れる、魔法の言葉 - まぐまぐニュース!:

 今回は弁護士の谷原誠氏の記事を元に、交渉において主導権を取る方法について考えてみようと思います。谷原氏の記事は以前にも取り上げさせて頂いたことがあり、その時は口下手でも交渉で有利に立つ方法に関するものでした。

 さて、そもそも交渉における有利とはどんな状況なのでしょうか。お互いが自分の狙うべき落とし所をもって交渉のテーブルに着く以上、交渉の結論には双方が勝ち・双方が負け・片方が勝ちもう一方が負けという3通りの結果が得られる点が、交渉ごとが普通の勝負ごとと異なる点です。そんな中でも結果に直接的に影響するのが、どの議題をどの順番で話し合うかということです。例えば自分も、顧客に対して提案活動する時、他のメーカーとインタフェース等の交渉をする時、有利に立つためにアジェンダを準備することがあります。自分のような業種の世界だけかもしれませんが、アジェンダと議事録は通常は打合わせをセッティングした方、大抵は立場が弱い方が作成する暗黙のルールがあり、個人的には弱い側が有利になる習慣だと思います。さて話を元に戻して、交渉における有利とはその会議をコントロールすること、議論の順番を仕切ることこそが、結論の勝利にグンと近づく近道なのです。

 ところが、どちらがアジェンダや議事録を作成するか暗黙的なものがない場合や、そもそもアジェンダを準備するのが馴染まない交渉の場もあるでしょう。両方がアジェンダを準備した場合もあるでしょう。そんな場合、どちらが司会役を兼ねて会議をコントロールするのか、どちらのアジェンダを採用するのかという鍔迫り合い(つばぜりあい)が発生することになります。交渉に慣れている人は、議題の順番が自分の求める結論に沿っているかどうかよりも、会議をコントロールするということそのものが交渉を有利に進めるキーポイントだということを知っています。つまり、相手が出してきたアジェンダが自分が元々考えていたアジェンダと同じだから、相手のアジェンダに沿って議論してもイーブンじゃないか、という意見は残念ながら正しくありません。たとえ誰が考えてもこの順番でしょうというアジェンダでも、実際に自分の提案によってその順番が確定し自分が会議をコントロールしたという事実が重要なのです。

 谷原氏は、そういった主導権争いにスムーズに勝つための魔法の言葉を教えてくれています。その魔法の言葉とは、
 ...
「本題に入る前に」
 ...
コレです。一体「本題」とは何なのでしょうか。売買交渉の場合の本題は価格なのか、納期なのか、品質なのか、保証内容なのか、注文数なのか。自分が考える本題と相手が考える本題は異なるかもしれませんし同じかもしれません。しかし、そんなことはどうでもいいのです。とにかく「本題に入る前に」なのです。そして、この言葉とは裏腹に、自分にとっての「本題」を話すのです。例えば、自分にとって納期をどう決めるかがその交渉における重要ポイントである場合、「本題に入る前に、まず納期について合意しておきたいのですが。」といった言い方をするのです。この魔法の言葉は「このテーマはさほど重要なことではない」という前置きです。相手側は「いや、それが一番重要なことですので」と否定しにくく、こちらが望む議論の場をスムーズに設定することができるというわけです。なんとも日本語のマジックのような感じですね。

 そんなひねくれた言い方じゃなく、もっとストレートな言い方の方がいい場合もあります。それは、
 ...
 「単刀直入に」
 ...
という言葉です。ただ、「本題に入る前に」のようにしょっぱなは大した話じゃないですよというニュアンスではなく、助走もなくいきなり本番ですよというニュアンスなので、相手を身構えさせることに繋がりやすいので注意が必要です。もし相手が「単刀直入に」と言ってきたら「まあ、その話はあとにしましょう」とやんわりと断るのがいいでしょう。

 日本語って面白いですよね。交渉ごとは最初に自分のもっとも譲れないポイントを合意するのがセオリーですが、そのために「単刀直入に」と言うよりも、あえて「本題に入る前に」とこれは重要ポイントじゃないですよというニュアンスを伝える方がいいとは。仕事は交渉の連続ですし、日常生活もやはり交渉の連続だと言えるかもしれません。色々な交渉テクニックを知っていると、たとえ直接的に使わなくても、仕事や日常生活が少し捗るかもしれませんね。