2017年11月19日日曜日

全自動農業という希望

農夫のいない農場 | VICE JAPAN:

 今回はClaire Downs氏の記事を元に、イマドキの農業はこんな風になっているんだという話題を。元記事で紹介されているのが、土地を耕すところから、農作物が育てて収穫するまでを管理する、世界初の完全オートメーション農業「ハンズフリー・ヘクタール(Hands Free Hectare)」です。完全オートメーションと言うだけあって、トラクターやコンバインといった農業機械だけでなく、カメラやレーザー・GPSにドローンといったハイテクが駆使されています。

 ハンズフリー・ヘクタールは、2016年10月、政府の資金提供20万ポンド(約3000万円)を受けたハーパー・アダムス大学のチームによって行われているプロジェクトで、英国シュロップシャーの農園では今年の秋見事に収穫の時を迎えたのだそうです。収穫されたのは大麦4.9トン。プロジェクトリーダーのKit Franklin氏によれば「ヘクタール単価が史上最高額の大麦畑」だそうですが、もちろん最終的には規模の原理による低コスト化を目指します。



 実は今、全自動農業を進める企業や団体は多いのだそうで、今年9月には、トラクター・メーカーであるJohn Deereが自動雑草除去マシン実用化のために、AI企業のBlue River Technologyを買収したり、京都のロボット・レタス工場 スプレッドは、日量3万株のレタスを生産しています。スタートアップ企業のDescartes Labsは、衛星画像の分析データを利用して、作物生産高の予測を行なっています。

 日本もそうですが、先進諸国では農業や漁業・林業などの一次産業は、高齢化による人手不足が深刻です。そんなピンチの救世主は、やはりロボットやIoT・AIなどの先端テクノロジーでしょう。Franklin氏は「(テクノロジーは)人の仕事を奪うのではない。人の仕事を変えるのだ」と述べておられます。農業分野における人間の仕事は、これまでの自ら手を動かし体を動かすことから、トラクターマネジャーとか農業アナリストとしてロボットを管理したり作物の成長を管理する、そんな仕事に変わってくのかもしれません。

 やはり、一次産業・二次産業というのは、基本的に身体を動かす仕事です。いわゆる肉体的な「労働(Labour)」については、テクノロジーによる置き換えが歓迎される傾向にあります。人間にはそのLabourを管理する仕事(Work)が残されており、肉体的に負担の大きいLabourはテクノロジーが担い、代わって人間は負担の少ないWorkへ移行するというのは、歴史的に人間がテクノロジーを開発してきた大きな動機です。一方で人間はまだ、Workの次に移行すべき仕事をはっきり見出せていませんので、テクノロジーがWorkをも取って代わろうとすると、人間側から大きな反発が生まれてしまうのです。

 人々の歓迎を受けて発展することができるテクノロジー、それが農業はじめとする一次産業や工場作業のような二次産業のアプリケーションで、そこでは人間は安心してテクノロジーの発展を受け入れられます。工場作業の中にはほとんど完全オートメーションという分野もありますが、農業・漁業・林業も完全オートメーションという時代が、すぐそこまで来ているのかもしれませんね。

2017年11月17日金曜日

愛犬のために1ついかが? 吠えて開けるドア

Pi-Rex – Bark Activated Door Opening System with Raspberry Pi:

 皆さんは、Rasberry Pi(ラズベリーパイ)という小型コンピュータをご存知でしょうか。こんな感じ(↓)のマザーボードむき出しのコンピュータで、4千円台から手に入ります(ケースをつけても8千円台くらい)ので、個人でもIoT(Internet of Things)を楽しむことができます。

 自分もちょっと触ってみたことがあるのですが、Debian系LinuxのRaspbianというOSをインストールして、普通のパソコン用のキーボードやディスプレイをつないで使うことができました。I/O端子も備わっているので、単純なところだとコンピュータ制御で出力信号を出してLEDランプを付けたり、センサーからの入力信号を取り込んだりすることができるのです。制御プログラムもPythonで書けますので、個人で手を出すIoTデバイスにうってつけなばかりか、企業の試作品にも十分に使えるレベルなのです。

 世の中には、そんなRasberry Piを使って面白いIoTシステムを作っている人たちがいます。今回ご紹介するのは、Daveh氏が作られた、犬が吠える声でドアを開けることができるようにしたシステムです。猫を飼っている人の中には、愛猫が自由に部屋に出入りすることができるよう専用の小さいドアを取り付ける人もいますが、大抵はヒンジのバネで押して開けるだけの単純な仕組みです。ところが元記事で紹介されているドアシステムは、犬が吠える声で自動的に開くドアという面白いシステムです(↓)。


 仕組みとしては、吠える声を検出するためのオーディオセンサーをRasberry Piの入力に、モータードライバーを出力にします。プログラム的には簡単で、一定以上のノイズを検出した時にモーターを駆動してロックを外します。ドアは天井を介して重りで引っ張るようにしておき、ドアはロックが外れさえすればそのまま引っ張られて開くことになります。犬の鳴き声を検出してモーターでロックを外し、重りでドアが引っ張られて開くというのが一連の仕組みというわけです。


 制御用のプログラムも公開されています(↓)。これを見ると、単純にオーディオセンサーからのパルス信号をRasberry Piに取り込み、一定の時間内にしきい値以上のパルス入力があった場合にロック解除を駆動するという単純なコードになっています。

import sys
import wiringpi2
from time import sleep
gpio = wiringpi2.GPIO(wiringpi2.GPIO.WPI_MODE_GPIO)
enable_1 = 27
enable_2 = 17
enable_3 = 18

gpio.pinMode(enable_1,gpio.INPUT)
gpio.pinMode(enable_2,gpio.OUTPUT)
gpio.pinMode(enable_3,gpio.OUTPUT)
gpio.pullUpDnControl(enable_1,1)
gpio.pinMode(enable_2,1)
gpio.pinMode(enable_3,1)

gpio.digitalWrite(enable_2,gpio.HIGH)
gpio.digitalWrite(enable_3,gpio.LOW)
sleep (0.1)
gpio.digitalWrite(enable_2,gpio.HIGH)
gpio.digitalWrite(enable_3,gpio.HIGH)

samples = [0 for i in xrange(50)]

j=0
ons = 0;

while (1):
        sample = gpio.digitalRead(enable_1)
        samples[j] = sample
        ons = 0;
        for i in xrange(50):
                if (samples[i] >0):
                        ons = ons +1;
        j = j + 1
        if (j>49):
                j=0
                print ons
        if ons >25:
                print ons
                gpio.digitalWrite(enable_2,gpio.LOW)
                gpio.digitalWrite(enable_3,gpio.HIGH)
                sleep (0.1)
                gpio.digitalWrite(enable_2,gpio.HIGH)
                gpio.digitalWrite(enable_3,gpio.HIGH)
                sleep (2)
                gpio.digitalWrite(enable_2,gpio.HIGH)
                gpio.digitalWrite(enable_3,gpio.LOW)
                sleep (0.1)
                gpio.digitalWrite(enable_2,gpio.HIGH)
                gpio.digitalWrite(enable_3,gpio.HIGH)
                for i in xrange(50):
                        samples[i] = 0;
                sleep (0.01)
 
 ハイテクで万能に思えるこのドアシステムですが、唯一にして最大(!)の弱点は、犬がドアを開けるときは吠えるだけでいいのですが、一度開けたドアは誰かが閉めてあげないといけないことです。閉める方は犬が自分でドアを押せば良さそうに思えますが、ドアは開く方向に常に重りで引っ張られていますので、"開けるは易いが示すは難し" かもしれませんね。それって製品だったら破綻してるんじゃ...なんて野暮なことは言わないように(笑)。IoTの発展のために、個人レベルのDIY(Do It Yourself)が盛り上がることがとても重要なのですから!

2017年11月15日水曜日

天才は孤独だが、本当は友人が必要

IQが低い=友達が多い  | VICE JAPAN:

 今回はDiana Tourjée氏の記事を元に、天才とは孤独なものだと言うお話です。それは孤独を余儀なくされるといった種のものではなく、むしろ自ら孤独を好むというお話です。

 英国の進化心理学者Satoshi Kanazawa氏とNorman Li氏が2016年に発表した研究結果によれば、多くの人々の幸福は、人口密度の減少と反比例して増加し、極めて知能が高い人は、友人と一緒にいないときのほうがむしろ幸福だというのです。確かに、いわゆる頭のいい人というのは、「孤高の天才」とか「近寄りがたい雰囲気」といった言葉が似合うように、友人たちとつるんでいるよりも一人で思考を巡らせている姿が似合うように思います。お二方の研究によれば、「より高度な知能をもつ人間は、友人との社会的交流が頻繁になるほど、生活満足度が低くなる」そうなのです。もちろん、IQが高い人の中にも社交的で友人が多い人もいるでしょうし、IQが低い人の中にもコミュ障のような人もいるでしょう。しかし、大きな傾向として概ねIQが高い人は孤独を好むという傾向があるのです。

 では、天才が友人と一緒の時間をあまり求めないのは、どうしてでしょう。元記事の中でTourjée氏は、周囲に足を引っ張られることがあるからだと述べておられます。いわゆる天才と呼ばれるような人々は、全体の中のほんの一握りです。例えば、高知能の人ばかりが集まるMENSAに入会するのは世界の中でほんの2%しかいなく、天才が自分と同じように情報を処理できる友人を探すのは極めて困難なのです。つまり天才の友人は多くは凡人で、凡人と一緒に何かをして足を引っ張られるくらいなら、自分一人で作業する方がずっとマシだと思っているのです。

 しかし、米国コーネル大学で人間発達学の教鞭を執るDr. Robert Sternbergによれば、知能の高い人々こそ友人が必要なのです。天才たちの行動は、彼らが天才であるがゆえに他の人がついて来られない可能性があります。天才は凡人に説明するのが下手で、結果的に多くの人を巻き込んで何かを成し遂げるということができない場合が多いのです。つまり、アカデミックな分野における知能の高さは、社会的な成功のための要因のあくまでも1要素であって、他に必要とされる社会的・感情的・常識的な能力などと全く関係がないのです。

 皮肉なことですが、他人とのかかわりを極力避けたい天才こそ、成功するためには他人との交流が必要なのです。天才がその天才ぶりを社会的な成功として結実するのが難しいのは、彼らが凡人たちとつるむのが難しいからかもしれません。

2017年11月14日火曜日

ノマドワーカーにぴったりの「TRENE(トレネ)」

一人での外出をもっと快適に!荷物を見守る小さなパートナー「TRENE(トレネ)」 | クラウドファンディング - Makuake(マクアケ):

 今回はネットで見つけた「これ欲しい!」という商品のご紹介。その名も「TRENE(トレネ)」(↓)。


外出時にスマホを持っていく人は多いと思いますが、自分の場合はスマホとノートパソコンの両方を持って行きます。例えばカフェなんかでパソコンを開いて作業をしている時に、電話が掛かってきてしまってパソコンを置いたままお店の廊下へ。あるいは、新幹線でパソコンを開いて作業していた時にそのままトイレへ、なんていうちょっと大切な荷物から離れるそんな時。置きっ放しの荷物が盗まれないよう見守ってくれるのです。

 ありそうでなかったこの商品、キングジムの渡部純平氏によって開発されたもので、クラウドファンディングサイトMakuakeでプロジェクト開始当日に目標金額を達成してしまったのだそうです。

 TRENEは、加速度センサとブザーとLEDのシンプルな構成で、使い方もとても簡単。事前にTRENEを自分のスマホとBluetoothで連携させておき、ちょっと席を離れるという時にパソコンや鞄など大切なものの上に置いておくのです。持ち主がスマホを持って席を離れると、TRENEは警戒モードに移行、TRENEが置かれた荷物が何者かによって動かされると、加速度センサーが感知してアラーム音とLEDの光で周りの人に知らせてくれるのです。スマホを持った持ち主が席に戻ってくると、警戒モードは解除され、TRENEと荷物を動かしても警報音や光が出ることはありません。LEDで、通常時は緑、警戒モード時はオレンジ、そして警報時は赤と言うように現在のモードが分かりますので、席を離れる時はちらっと後方を見やってオレンジになっていることを確認すれば良いと言うわけですね。

 事前にスマホのアプリで、警戒モードに移行する距離(最大10m)やセンサーの感度(3段階)、アラーム音の大きさ(3段階)などを設定しておくことができます(↓)。TRENE本体は2時間の充電で20時間の連続駆動ができるので、丸一日分は十分持ちそうです。


 販売予定価格は6,800円(税抜)。Makuakeでは、正式な発売日は2018年2月下旬頃の予定だそうです。席をはずす時にちょっとオシャレに荷物を見守ってくれるTRENE。例えばノマドワーカーの人が、コワーキングスペースを利用する時とかカフェで仕事をする時なんかに重宝しそうですね。自分はノマドワーカーではありませんが、外出時にノートパソコンを開くことも結構あるので、かなーり惹かれてしまいます!

2017年11月12日日曜日

チームで成果を出すコツは「デキる人を活かし切る」こと

「ウチは仕事の出来る人ほど、残業する」と語った経営者がいた。 | Books&Apps:

 今回は、働き方改革が叫ばれている2017年にはちょっと風当たりが強いかもしれない、安達裕哉氏の記事を元に、組織としての生産性を上げる方法について考えてみようと思います。念のため言っておくと、安達氏の元記事は2014年に書かれたもので、電通の女性新入社員の過労死から社会問題にまで発展した「働き方改革」が叫ばれる前に書かれた記事です。

 元記事で言われているのは、残業時間と仕事ができるかどうかには何らかの関係性があります。ただその関係性をどう判断するかは全く正反対の2つの考え方があって、1つ目は、残業をたくさんする人は定時内に仕事を終えられない無能な人だとする考え方です。それと正反対な2つ目は、残業をたくさんする人はそれだけ仕事熱心な人だという考え方です。直感的には、どちらかと言うとブルーカラーや単純作業の場合に、前者の考え方が当てはまりやすいような気がします。作業ベースの場合なら、だらだらと仕事をする人はテキパキとこなす人より時間ばかりかかる。それに対して、ホワイトカラーや頭脳系の仕事あるいはアーティスト系は後者の例も多いかもしれません。自分が関わっているソフトウェア開発も、ノッている時に定時だから続きはまた明日とやってしまうと、勢いが失われたりして仕事のデキが悪くなる場合があります。

 しかし、安達氏が出会った経営者の方の考え方はこのどちらとも違って、生産性の高い人物にしか残業をやらせないと言う考え方だと言うのです。仕事がデキない人にはとっとと定時に帰ってもらって、仕事がデキる人には残業してもらう。残業は許可制で、残業できることは仕事ができる人だと認められていると言う意味で、社内におけるステータスだと。

 この経営者の言葉を読ませて頂いて、自分はある人から聞いた、チームで成果を出すためのマネジメントの話を思い出しました。そのある人というのは、実は自分の父親なのです。父は、今では自分で事業をやっていますが、若い時は外資系の銀行に勤めていました。まだ高校生か大学生くらいだった自分に父が語ってくれたのは、急いで片付ける必要がある重要な仕事が発生した時、その仕事を暇な人と忙しい人のどちらに振るべきかという話でした。もちろんわざわざこんな質問をしてくるんですから、暇な人ではなく忙しい人に振るべきだという答えなのですが、暇な人というのは基本的には仕事のデキない人で、暇にしているということは新たな仕事が振られても頭の切り替えにまず時間がかかる。それに対して忙しい人というのは、仕事がデキる人で、かつ現在忙しくしていると言うことはノッテいる状態。暇な人に仕事を振っても、エンジンがかかるのが遅いばかりかアウトプットのレベルも低い。それに対して忙しい人は、エンジン全開状態なので新たな仕事も右から左にやっつけることができ、かつ出来栄えも素晴らしい。「急ぎ」で「重要」という仕事をどちらに振るべきかは、自ずとわかるはずだと言うのです。

 当時の父の仕事と自分の仕事は分野も中身も違いますが、自分も仕事を人に振る時は、その仕事が重要なものであればデキる人に振るようにしています。以前に少し大きめの開発をやっていた時、自分のチームはプログラマー6人で進めていたのですが、重要な機能は自分が密かに「飛車・角」と呼んでいたエース2人に実装させ、他の人にはテストコードを書いてもらうというやり方を取りました。もちろんテストコードを書く4人には、自分がいかにテストを重視しているかを説明して納得させた上で、エースの2人にはプロジェクト成功のカギにあなた方2人を活かし切ることだと考えていると言いました。あえて言うなら、キモとなる仕事は全てエースに振り、その周囲にある雑用的な仕事を4人に振ることで、エースの力を限界まで引き出すというやり方。結果は、他のチームが軒並み不具合を連発するのに対して、自分のチームは良い成果を出すことができました。

 その時、頭脳系の仕事の場合にチームで成果を出すコツはやはり、「仕事の振り方に濃淡をつけること」だと痛感しました。単純作業ベースの仕事なら、平等に仕事を振らないとメンバーの不平不満の原因になりますが、クリエイティブ系の仕事は「デキる人を活かし切ること」。これだと思います。

2017年11月11日土曜日

「ネ申エクセル」と「Excel方眼紙」をめぐる議論

“ネ申エクセル”をめぐって徹底討論! 「Excel方眼紙公開討論会」開催:レポート|gihyo.jp … 技術評論社:

 皆さんは「ネ申エクセル」という言葉をご存知ですか。エクセルといえばMicrosoft社の表計算ソフトExcelのことだし、それが「神」というくらいだからExcelの素晴らしさを讃えたものかと思えば、さにあらず。よーくみると「神」ではなく「ネ申」。見た目はよく似ていますが、文字としてはカタカナの「ネ」と漢字の「申」をそれぞれ偏(へん)と旁(つくり)として使っていて、これを読むのが人であれば「神」と読めるもののコンピュータに読ませると「ネ」と「申」になってしまいます。このように、人が入力したデータを人が読んだり印刷したりする場合はまだしも、コンピュータで再利用できない(もしくは再利用が難しい)ケースが「ネ申エクセル」と揶揄されるのだそうです。

 「ネ申エクセル」をいとも簡単に作り出してしまうのが、「Excel方眼紙」と呼ばれる入力用シートです。最もひどい例がこんな(↓)やつで、何がひどいかと言うと、1セルに1文字しか入れない前提なので、もはやコンピュータどころか人がキーボードを使って入力するのさえ困難です。こういうタイプのExcel方眼紙を作る人は、これを入力する人のことさえ考えられないのかも知れません。

一方で、Excel方眼紙の何が悪いんだという立場の人もいます。元記事の討論イベントにも登壇されているプログラマの長岡慶一氏は、Excel方眼紙を不便と思ったことがないと述べられています。どちらかというとExcelシートからデータを抜き出して再利用しようというプログラマの方の言ですから、Excel方眼紙もいいものなのではないでしょうか。

 しかしよく考えると、Excel方眼紙の反対派の方と賛成派(というか容認派)の方が思い描いている「Excel 方眼紙」は実は微妙に異なっているのです。Excel方眼紙なんか百害あって一利なし言う方が思い描いているのは、方眼紙というよりも作文を書くときの原稿用紙をイメージしているような気がします。最もひどい例として先に出したこんな(↑)やつは、英語入力ならまだしもフレーズ単位で入力する日本語ワープロだと、書いたフレーズを1文字ずつに分解して1つ1つのセルに入れなければなりません。これはとても効率が悪く、下手したら手書きよりも時間がかかります。こんな1セル1文字のExcelから値を読み出してデータベースに入れるようなプログラムを作ろうとすれば、できないことはないけどとても大変ということになります。

 一方で長岡氏のようなExcel方眼紙容認派の方が思い描くのは、こんな感じ(↓)の方眼紙ではないでしょうか。どちらかというと複数のセルを1つに結合して大きめのセルを作り、そこに入力させようとするタイプです。実は、これならワープロ入力もそれほど大変じゃないですし(タブやエンターキーで次の入力用セルに移動できるようにする等の親切機能には多少の工夫が要りますが)、データの再利用性も高いです。1つのセルに1つのデータが理想とすれば、複数セルを結合したセル1つに1つのデータですから、それほど利便性が下がっていません。


 ちなみに、自分が最近出会ったExcel方眼紙は、1つのセルの中に「名前:   」となっていて、このコロンの後に名前を書いてくださいという意味なのですが、こういうのも使いづらいExcel方眼紙の一つです。入力するときはわざわざコロンの後までカーソルを移動する必要がありますし(間違って「名前:」を消してしまうこともある)、書く前にコロンの後の余計なスペースも消さないといけません。データを再利用するプログラム側からすれば、セルの値からコロンの右側だけを取り出さなければならないのです。

 つまり、「Excel方眼紙」そのものが悪いのではなく、入力する人やデータを再利用する人に対する思いやりが感じられるExcel方眼紙はむしろ歓迎してもいいくらいで、そういう思いやりを一切感じられない「ネ申エクセル」をも作り出せてしまうことがExcel方眼紙の罪なところということだと思うんです。VB(Visual Basic)の入力フォームだったら誰が作ってもだいたい一定のレベルのものができますが、Excelの場合は入力フォームの使いやすさ(使いづらさ)はピンキリになってしまいます。

 「ネ申エクセル」は帳票などの紙の仕事が中心という職場で生まれやすいと思うのですが、「ネ申エクセル」を作り出す人というのは、何もわざと入力者を困らせてやろうとか、この入力データを集計するプログラムを作る人を困らせてやろうと思っているわけではないと思うんです。「ネ申エクセル」の生みの親は、そもそもExcelのことをよく知らないという人です。知識がないために、紙ベースの申請書や原稿用紙をそのままExcelで作ろうとして、頭の中は印刷された結果がこれまでの紙と同じかどうかしか考えていないので、入力する人の手間や集計する人の苦労まで思いが届かないのです。

 あなたの周りで「ネ申エクセル」を次々と生み出す厄介な人がいる場合、その人を非難する前に、Excelのセミナーや講習会などで知識を獲得させてあげる必要があると思うんです。

2017年11月10日金曜日

「どうせ」と 「どうせなら」の小さくて大きな違い

『トム・ソーヤーの冒険』から学ぶ仕事の楽しみ方 「どうせなら」の発想で職業は生まれ変わる | JBpress(日本ビジネスプレス):

 今回は生産性至上主義のマイナス面を考えた前回と同じ篠原信氏の記事を元に、仕事というのは捉え方次第・取り組み方次第という話題。昔から言われていることではありますが、人から言われてする仕事は楽しくないが、自分から進んで取り組む仕事は楽しい、ということです。

 自分も経験がありますが、人からやれと言われて受け身でやる羽目になった仕事というのは、意欲がちっとも湧かず、できるだけ手を抜いてやろうとしがちです。結果的に、その仕事の成果は及第点ではあるものの、ギリギリ及第点といったレベル。嫌そうにやっている作業を見ても誰も助けてくれず、どんどん悪循環。それに対して、自分からやってみたいと取り組んでいる仕事は、どうやったらうまくやれるだろうかと工夫し、工夫することがさらに楽しさを生む好循環が生まれます。そうやって楽しく意欲的に取り組んだ仕事の成果は期待以上のものが生まれ、そうするとますますその仕事が楽しくなる。楽しそうに夢中に作業している姿を見た人も感化され、「なんだか楽しそうな仕事だな」とその仕事が輝き出します。

 目の前の仕事がイヤな仕事だったとしても、「『どうせ』やらなきゃならない」と後ろ向きに取り組むのではなく、「『どうせなら』楽しんでしまおう」と考え方を変えてみましょうということです。仕事を「楽しむ」ということはその仕事にのめり込むということでもありますから、自然とその仕事に「心がこもる」ようになります。心がこもった仕事は、周囲を感化して巻き込みます。面白そな仕事を自分もやってみたいと、周りに人が集まってくるのです。

 篠原氏は「トムソーヤの冒険」に出てくるお話で、この「どうせなら」の精神を表現されています。遊びに出かけようとするトムは、伯母さんに壁のペンキ塗りを言いつけられます。「え~っ。今遊びに行こうと思ったのに!」とペンキ塗りをイヤな仕事と思ったトムですが、ここで「どうせ」から「どうせなら」に考え方を変えて、楽しそうにペンキを塗り始めたのです。通りかかった友人は、最初は「なんだ、家の手伝いをさせられているのか」とからかいますが、トムのあまりにのめり込む様子にやがて「なあ、俺にもちょっとやらせてくれないか」と頼んできます。「え~っ、やだよ」ともったいつけるトムに対し、ついに友人は「このリンゴをあげるから!」。

 「どうせ」その仕事をやるなら、「どうせなら」の発想で楽しんでしまう。それはちょっとした心の持ちようだけに思えますが、あなたの周りに革命的な変化をもたらすかもしれません。「職業に貴賎なし」と言いますが、それでも陽の当たらない仕事や下に見られがちな仕事というのも現実にはあるでしょう。そういった仕事を「どうせ」やるんだったら、「どうせなら」のめり込んで色々な工夫を凝らし楽しんでしまおう。何を青臭いことをと思われるかもしれませんが、心の持ちよう一つで人生が変わるなら青臭さもいいじゃないかと思うのです。